ひとりかくれんぼ

ひとりかくれんぼ

福井県 会社員 伊藤 俊(34)(仮名)

これは、今から10年以上前の話です。

当時、車の免許を取ったばかりの私は、週末になると、その頃付き合っていた彼女とドライブに行くのが習慣でした。

初めのうちは、夏場なら海に行ったり、それ以外の季節にはいわゆる観光名所に行っていましたが、次第にネタも尽き、いつの頃からか、雑誌やネットで探してきた心霊スポットに通うようになりました。

ただ、日帰りだと行ける範囲もある程度限られているので、毎週のように通っていれば、当然、すぐに行く場所も無くなります。

それに、心霊スポットと言っても、霊感も何もない2人が行ったところで、特に怖い経験や不思議な現象に遭遇することもありません。

このお話は、そんな週末に突然巻き起こった、とある金曜の夜の出来事です。

その日、私のアパートに遊びに来ていた彼女が、テーブルの上に置いてあった心霊系の雑誌を見ながら、嬉しそうに話しかけてきました。

彼女「ねぇ、俊。これ知ってる?『ひとりかくれんぼ』ってやつ」

私「ん? 何それ? 一人でかくれんぼするの?」

彼女がいたずらっぽい目で差し出してきた雑誌には、その「ひとりかくれんぼのやり方」という見出しが、おどろおどろしい書体で躍(おど)っていました。

ざっくり内容を読みましたが、その時は今ひとつピンと来なかった私は、何気なく明日のドライブの行き先の事に、話題を変えました。

それから1ヶ月ほど経ったある日のことです。

いつものように、私のマンションに遊びに来た彼女が、部屋に入るなりカバンの中から、まだタグの付いているうさぎのぬいぐるみと、愛用の手帳を取り出し、嬉しそうに話しかけてきました。

彼女「ねぇ、俊。ちょっと前に『ひとりかくれんぼ』の話ししたよね!」

私がうなずくと、彼女は続けました。

彼女「その『ひとりかくれんぼ』のね、正式なやり方というのを入手しましたー!!」

彼女の異常なハイテンションに、私はちょっと引き気味でしたが、こうなるともう彼女の勢いは止まりません。

私はその手帳に書かれた「正式なひとりかくれんぼのやり方講座」を、延々聞かされる羽目になりました。

彼女「1,ぬいぐるみのお腹の綿を出し、代わりにお米を詰めます」

彼女「2,自分の爪、もしくは髪の毛か血を、お米と一緒にぬいぐるみのお腹に入れます」

私「あ、俺、今朝爪切ったばっかりだわ」

彼女「えーっ!」

仕方ないので、爪と髪の毛は、彼女のものを使うことにしました。

彼女「3,赤い糸でぬいぐるみのお腹を縫って閉じます。余った糸は切らずにぬいぐるみに巻きつけておきます」

彼女「4,ぬいぐるみに『名前』をつけます。『あいちゃん』にしましょう」

命名の理由は分かりませんでしたが、特に否定する理由もありません。

彼女「ここまでで、事前準備完了ね」

私「え、これでやっと事前準備なの? 長いね・・・」

私はちょっと飽きていました。

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