斉藤壮馬さん(20代・会社員)の恐怖体験談
それは、私が小学校に上がる前、たぶん5歳くらいの頃の体験談です。 その日は朝からとても暑かったのを覚えています。 たったひとつ、砂場に空けたトンネルが、あんなことになるとは思ってもいませんでした。
セミの声がうるさいくらいに響く、そんな暑い日でした。家の中で遊ぶのに飽きた私は、母にねだって、近所の公園に連れて行ってもらいました。
平日の午前中なら、その公園に行けば、いつも一緒に遊ぶ友達が1人や2人はいるものです。
その日もやはり、一番仲良しで同い年のケイタロウ君が、先に滑り台で遊んでいました。
公園内の遊具でひとしきり遊んだあと、2人で一緒に砂場へ向かいました。
「今日は今までで一番大きな砂山を作ろう」
そう言って、体中砂だらけになりながら、過去最大の砂山を作りました。
それでも飽き足らず、私たちはその砂山に、トンネルを開通させることにしました。
砂山の両端から、2人で懸命に腕を突っ込みます。私は反対側から伸びてくるであろう、ケイタロウ君の手を探していました。
ちょうど砂山の半分くらいまで掘った、そのときです。
「ガシッ」
突然、手首を掴まれました。
幼いとはいえ、その手の力の強さと角度で、ケイタロウ君の手じゃないことは、すぐに分かりました。
その手は、砂場の真下から伸びていました。
私の手首を、ものすごい力で掴んで離しません。
次の瞬間――
その手は私の手首を掴んだまま、砂場の真下に向かって、私を引きずり込もうとしたんです。
「やめてよ! はなしてよ!!」
そう叫ぼうとしたときにはもう、私は頭から砂山に突っ込んでいました。グイグイと、砂場の中に引きずり込まれていきます。
感覚としては、頭からお腹くらいまで、一気にズボッと砂の中に引きずり込まれたような感じでした。
耳の奥で自分の心臓の音がドクドクと響き、手足をばたつかせても、砂の重さに阻まれて、ちっとも自由になりません。息をしようとしても、口の中に砂が入ってきて、苦しくてたまりません。
それなのに、なぜか目だけは開けられました。
自分の手首を掴んでいる奴を見ると――
それは、私と同い年くらいの、おかっぱ頭の女の子でした。
真っ白な顔色。目は白目がなく、全部真っ黒。
左右に裂けたように広がる、真っ赤な唇。
その不気味な笑顔が、強烈に印象に残っています。
私の手首をグイグイと引っ張りながら、その女の子が言いました。
「ネェ・・・ コッチデ イッショニ アソボウ・・・」
砂山に頭を突っ込んでもがく私の異変に、いち早く気づいたのは母でした。私の両脇を抱え、砂山の中から引っ張り出してくれたんです。
あまりの恐怖と、息ができなかったせいで、私は気を失いました。砂だらけのまま、母が家まで連れて帰ってくれました。
母は、私が頭を突っ込むようにして掘った砂山が崩れ、埋まってしまったのだと思っていたようです。
母に砂場から救出された、その瞬間――
掴んでいた手が振りほどかれ、女の子はとても寂しそうな表情のまま、砂の中に沈んでいきました。
あの顔を、私は今でも鮮明に覚えています。
そして、私の手首には、あのとき女の子に引っかかれた爪痕が――
今でも、薄っすらと残っています。


