免許合宿での出来事

免許合宿での出来事

新潟県 会社員 木原 伸幸(24)(仮名)

高校を卒業して、県内の運送会社に就職して、2年ちょっと経った頃です。

会社の業務命令で、中型車の免許を、隣県の合宿コースで取りに行くことになりました。

日程は7泊8日。

ちょっとした旅行気分で、それも会社の経費で行けるなんて!

正直、この会社に就職して本当に良かったと、心からうれしく思いました。

出発の日の朝、上司に挨拶を済ませ、電車とバスを乗り継ぎ、合宿所へと向かいました。

昼過ぎに到着した合宿所は、想像していたよりもずっと立派で、ちょっとしたホテルのような雰囲気でした。

すぐに入所手続きを済ませ、荷物を預けると、すぐに学科教習が始まり、夕方には実車教習となりました。

6トンの教習車は、今まで助手席から見ていた感覚と違って、とても大きく感じ、ハンドルを握る手にも力が入りました。

実車教習の興奮冷めやらぬまま、あっという間に初日のスケジュールが終了し、食事と入浴を済ませ、そこで初めて自分の部屋へと案内されました。

4畳ほどのこじんまりとした個室の左手にはベッドが置かれ、反対側には小さな机と椅子があり、その奥には折りたたみ式の扉が付いたクローゼットが配置されていました。

部屋は狭いながらも清潔で、快適な合宿生活が送れそうで、少し安心しました。

ベッドの上にドスンと寝転ぶと、やはり少し疲れていたのか、この日は早めの就寝となりました。

どのくらい時間がたったでしょうか。

ふと目を覚ますと、点けっぱなしだったはずの電気が消えて、部屋の中は真っ暗でした。

頭だけを起こして室内を見ると、クローゼットの隙間から薄っすらと光が漏れているのが見えました。

「クローゼットの中にも電気が点くのか?」

漏れる明かりをぼんやり見ていると、クローゼットの中で影のようなものがスーッと動くのが見えました。

「何だ? ネズミとかだったら嫌だな・・・」

気になった私はベッドから起きて、クローゼットの折りたたみ式の扉を開け、中を確認しましたが、特に変わった様子はありませんでした。

「気のせいか・・・」

そう思って扉を閉めようとした時、クローゼットの中に、紙切れのようなものが落ちているのが見えました。

「何だ? ゴミか?」

そう思って、その紙切れを拾った瞬間、電気を点けっ放しにしたままの部屋のベッドの上で、パッと目が覚めたのです。

「え? 夢か・・・ リアルな夢だったな・・・」

そう思ったのもつかの間、私の右手には、夢の中で拾った紙切れが、しっかりと握られていたのです。

「わっ! 何だコレ! 汚ったねぇ!」

私は確認もせず、その紙切れをベッドサイドのゴミ箱に、クシャクシャに丸めて捨ててしまいました。

その後、私は電気を消して、改めて眠りにつきました。

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