神奈川県 小堀康平さん(20代・会社員)の恐怖体験談
今の彼女と出会ったのは、元カノとの縁が、まだ完全には切れていない頃でした。 気持ちはとっくに離れていたつもりでした。電話もメールも、全部無視していれば、それで伝わると思っていたんです。 まさか、そのツケを、あんな形で払うことになるとは思っていませんでした。
「このまま放っておけば、いずれあきらめるだろう」
私は、そんな風に高を括っていました。
ちょうどそんな時に出会った今の彼女は、看護師でした。友人と呑みに行ったとき、たまたま隣の席にいたことがきっかけで、あっという間に意気投合し、その日のうちに付き合うことになったんです。連絡先を交換してからも、毎日のようにメッセージのやり取りが続くくらい、順調な滑り出しでした。
何度かデートを重ねたある日、彼女が私の住むマンションに、初めて泊まりがけで遊びに来ることになりました。
前日、部屋の隅々まで徹底的に掃除しました。友人のアドバイス通り、彼女が来たときに簡単に片付けられるものを、わざと少しだけ出しておく。彼女の母性をくすぐる作戦です。これが、ものの見事に成功しました。
初めて食べる彼女の手料理を楽しんで、ひとしきりイチャイチャしたあと、狭いベッドで仲良く眠りにつきました。
夜中、LINEの着信音がして、うっすらと目を覚ましました。
こんな時間に連絡してくるのは、どうせ元カノだろう。
そう思って、そのままにしておきました。
すると、次の瞬間です。
生まれて初めての金縛りを経験しました。
噂で聞くよりも、ずっと苦しいものでした。体が動かないだけじゃありません。うまく息をすることさえできないんです。
部屋は暗く、彼女の寝息だけがすぐ隣で聞こえていたはずでした。
あまりの苦しさと恐怖で、私は思わず目を開けました。
――私の胸の上に。
知らない女が、真っすぐ立っていました。
「だ・・・ 誰だこいつ? 降りろ! 降りてくれ!!」
心の中でそう叫びながら、どこかで会ったことがある気がする、その女の記憶をたどりました。でも、思い出せません。
かろうじて動く目だけを動かして、隣で寝ているはずの彼女を見ました。
彼女も、目を丸くしていました。私の胸の上に立つ女を、じっと見つめています。
何とか彼女と意思の疎通を図ろうとしましたが、体はやっぱり、全く動きません。
改めて、胸の上の女をよく見ました。
右手の薬指に――
俺が以前、元カノにプレゼントした指輪が、はまっていました。
「お・・・ お前!!」
全身に力を込めて、振り絞るように声を出しました。
その瞬間、胸の上の女は消え、金縛りが解けました。
私と彼女は2人でベッドから飛び起き、電気をつけることすら忘れて、しばらくの間、恐怖で固まっていました。
やがて彼女が、重い口を開きました。
「さっきの女、一体誰なの?」
顔は、確かに全く知らない女でした。でも、右手の薬指には、俺が元カノにプレゼントした指輪が、間違いなくありました。
そう説明すると、彼女は私のスマホに保存してある、元カノの写真を見せろと詰め寄ってきました。
そんなもの消さずに保存していたら、きっと怒られるだろうな。
そう思いながらも、腹をくくって、スマホに残っていた元カノの写真を彼女に見せました。
実は彼女は、美容整形外科の看護師でした。街ですれ違った人の顔を見て、どこをどう整形しているのか、瞬時に見抜くことができるんです。
彼女は、元カノの写真を見た瞬間――
さっき私の胸の上に立っていたのは、この人だと確信したそうです。
その後、元カノの写真はスマホから全部消しました。改めて元カノに連絡して、もう気持ちがないことを、ちゃんと伝えました。
生霊って、整形した顔までそのまま霊になることは、できないんですね。


