上下に挟まれた話

上下に挟まれた話

茨城県 会社員 金城達也(24)(仮名)

以前、俺が住んでいたマンションは、上の階と下の階から、毎日のように男女が言い争う声が聞こえてくる部屋だった。

建物の構造上、下からの声や物音は軽減されるので、多少は我慢もできるが、上からの騒音や怒鳴り声は、ちょっと厳しい。

昨日は土曜日で仕事が休みだったが、朝っぱらから上の階の言い争う声で起こされてしまった。

せっかくの休日に安眠を妨害され、虫の居所が悪かった俺は、マンションを管理している不動産屋に電話して、上の階の住民に注意してもらった。

事件があったのは、その翌日のことだった。

その日は日曜で仕事は休みだったが、これまた朝っぱらから、激しく怒鳴り声が聞こえてきた。

「・・・マジか・・・今日は下からか・・・」

残念なことに、寝ていると下からの騒音も良く聞こえる。

かといって、2日連続で不動産屋に電話するのも、まるでクレーマーのようで嫌だったので、少し様子を見ることにした。

それにしても、上の階も下の階も、あんなにしょっちゅう言い争っているのに、不思議と同じタイミングでケンカが起きることはない。

いつも上の階か下の階、どちらか一方だということに、この時気付いた。

「同時にされてもたまんないけどな・・・」

そんなことを考えていると、いつの間にか下の言い争いも終わったようだ。

すると、しばらくして、上の階から

「バタバタバタバタッ!!」

っと、全速力で走るような音が聞こえたかと思ったその瞬間、ベランダ側の窓の向こうで、

「ヒュッ」

と音を立てながら、何か白っぽい物体が落ちて行くのが、視界の中に入った。

「え?・・・ヒ・・・ヒト・・・?」

そう思ったが早いか、すぐにマンションの外で

「ドンッ! ドシャーン!!」

と、まるで交通事故のような、物凄い音がした。

その音は、すぐ下の階から聞こえた。

恐る恐るベランダに出てみると、上の階から1本のロープが垂れ下がっている。

ベランダの手すりから身を乗り出して見ると、ロープは下の階のベランダの、グチャグチャに破壊された窓ガラスの中へと続いていた。

「何だこりゃ! どうなってんだ!?」

さらに身を乗り出して確認しようとしても、落っこちそうになるばかりで、いまいち状況が把握できず、しばらく呆然としていた。

すると、3分もしないうちに、救急車、消防車、パトカーがけたたましくサイレンを鳴らしてマンションの下に集まってきた。

その後、俺の部屋を訪ねて来た不動産屋に聞いた事の詳細が、以下の話だ。

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