お姉ちゃんの部屋

お姉ちゃんの部屋

長野県 高校生 丸山 佑輔(17)(仮名)

半年ほど前、友人Aの家に遊びに行った時の話です。

Aは、中学校からの同級生で、同じ市内の高校に進学してからも、良く一緒に遊びに行く仲でした。

小遣いがある時はカラオケに行ったりもしましたが、金欠になると、僕の家で過ごすことが多く、いつも他愛もない話で盛り上がっていました。

ある日の放課後のことです。

その日はたまたま、母の知り合いが僕の家に来る予定があり、お金もなかったので、遊ぶ場所に困っていると、珍しくAの方から

「じゃあ、ウチ来るか?」

と誘って来ました。

今まで僕は、Aの家に行ったことが一度も無かったので、喜んでその案に賛成しました。

Aの家は、学校から自転車で20分ほどの場所にありました。

Aに促されるまま部屋に通されると、僕は早速、Aの部屋の中をグルッと観察しました。

ベッドと机、小さなソファーがあり、割ときちんと片付いた、Aらしい部屋です。

ただ、ソファーの向こう側に襖(ふすま)があり、そこから隣の部屋に出入りできないようになっていることに、少し違和感を覚えました。

出された麦茶とスナック菓子を摘みながら、いつものくだらないバカ話に興じていた時です。

隣の部屋から

「ゴトッ・・・ ゴトゴトッ!」

っと、音がしました。

Aの家には誰もいないと思っていた僕は、Aに

「あれ? 誰かいるの?」

と尋ねると、Aは

「あぁ、あれ? 姉ちゃん・・・」

と、小さな声でボソッと答えました。

Aは一人っ子だと思い込んでいた僕は、その言葉に驚いて、

「え?! お前、お姉さんがいたの?!」

と、自分でも驚くほど大きな声で切り返してしまい、思わず自分の口を手で塞ぐと、Aはまたボソッと

「うん・・・」

と、下を向いたまま答えました。

僕は完全にテンション爆上がりでした。

高2の男子が、友人のお姉さんに興味がない訳がないですよね。

その後、お姉さんの名前や年齢、職業、身長、体重、似ている芸能人などなど、必死で聞き出そうとしたのですが、Aは口籠ったまま、何一つ答えてくれません。

すると、襖の向こうで

「ンフッ・・・ フハハハッ・・・」

と、微かに、少し子供っぽくも聞こえる笑い声がしました。

「お姉さんが誰かと携帯で話しているのかな?」

妄想は膨らむばかりです。

ただ、Aはその事になると話をはぐらかし、全く乗って来てくれません。

そこで、Aとの会話中も、そのことを悟られないように注意しながら、頭の片隅では常に、襖の向こうの様子を覗くチャンスを伺っていました。

しばらくすると、Aの携帯が鳴りました。

「もしもし・・・ え? うん。 今、友達来てっから。 何で? 大丈夫だよ。 あ? う、うん・・・」

おそらく、母親からかかって来たのでしょう。

Aはその会話を聞かれたくなかったのか、通話を続けながら、ゆっくりと部屋を出て行きました。

「よっしゃーっ! チャーンス!!」

こうなるともう、高2男子の欲望は歯止めが効きません。

ソファの上に後ろ向きに座り、バレないようにそーっと襖を開けて、隣の部屋の中を覗いてみました。

雨戸が閉まっているのか、部屋の中は真っ暗で、開けた襖から光が真っ直ぐ差し込みました。

ドキドキしながら、暗さに目が慣れるのを待っていると、部屋の左隅に小さな明かりが灯っているのが見えました。

さらに目を凝らしてみると、その明かりは蝋燭の形をした仄暗いライトで、そのゆらゆらと揺れる頼りない光に浮かび上がって見えたのは、小さな仏壇でした。

よく見ると、仏壇にはお菓子やジュースが沢山供えられていて、その横のテーブルの上には、幼稚園か小学生くらいの、小さな女の子の写真が飾られていました。

「あれ? 誰もいない」

そう思いながらさらに目を凝らすと、何となく辺りがゆらゆら、ぼんやりとぼやけて見えます。

蝋燭型のライトのせいなのか、自分の目が暗さに慣れていないのか、一度強く目をつぶって、もう一度部屋の中を見た時です。

僕のすぐ目の前、手が届きそうなところで、半透明の女の子が小さなボールを持って、部屋の中をスキップをしながらグルグル回っているのが見えました。

視界がおかしかったのは、その女の子が動き回っているせいで、その向こう側がゆらゆらと歪んで見えていたのです。

息を飲んだその瞬間、くるっとこちらを向いた女の子は、鼻から頭の横まで、ザックリと欠けていました。

「 !? 」

次の瞬間、その女の子はフワッと消えていなくなり、持っていたボールだけが

「トン・・・・ トン・・・ トントントトン・・・」

と床の上に弾んで、こちらに転がって来ました。

「やべぇ・・・ 絶対見ちゃいけないモノを見てしまった・・・」

そう思いながらそーっと襖を閉め、後ろを振り返ると、いつの間にか部屋に戻って来たAが、険しい顔をして、僕を睨んでいました。

「うわっ! ご・・・ ごめん・・・」

その後Aは、13年前に事故で亡くなったお姉さんの話をしてくれました。

それからというもの、今でも月命日になると、お姉さんが隣の部屋に遊びに出てくるのだそうです。

私が遊びに行ったその日は、ちょうどお姉さんの月命日でした。

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