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白いヘルメット②

その子は白いヘルメットを抱えて逃げる私に

「いいなー そのヘルメット。 私にちょうだい!」

と言いながら、私を追いかけて来ます。

「いや! これは彼にもらった大事な物なの! 絶対ダメ!!」

私が逃げながら叫ぶと、女の子は突然追いかけるのをピタッとやめて、寂しそうにその場にうずくまりました。

それを見た私は、何だか申し訳ないことをしたような気分になり、恐る恐る彼女の近くまで戻りました。

私が彼女のそばまで戻ると、突然、彼女は物凄い形相で

「じゃあ・・・ ソノ カレ チョウダイ!!」

と叫びながら、私に向かって飛びかかって来たところで、目が覚めました。

目覚めた瞬間、私は自分が中学生だった時のことを、一気に思い出しました。

ベッドの脇に立っていた女の子・・・ 彼女は、中学校の同級生だった”ミヤちゃん”だったのです。

彼女は、いわゆるストーカーのような子で、入学して間もない頃から、私のハンカチや髪留めのゴム、シャーペンなど、私の物を何でも

「いいなー それ。 私にちょうだい!」

とねだって来るような子でした。

私がそれを断ると、どこで探してくるのか、翌日同じものを買って来ては自慢げに見せつけて来て、私の気を引こうとする、ちょっと変わった子でした。

私も「そのうち飽きるだろう」と、初めはそれほど気にしなかったのですが、丸1年以上その行為が続き、だんだん鬱陶しくなってきたので、中2の1学期が終わる頃、かなり強めに「私の真似をするのはもうやめて」と注意したことがあったのです。

その後、ミヤちゃんは2学期が始まっても、学校に来なくなりました。

当時はまさか私の一言が原因とも思わなかったので、「登校拒否? それか転校でもしたのかな?」くらいに考えていたのですが、風のウワサで、ミヤちゃんはその年の夏休みが始まってすぐに事故に遭い、亡くなっていたのだと知ったのは、ほんの1ヶ月ほど前のことでした。

それでも私は「実はミヤちゃんが亡くなっていた」と聞いても、何年も前のことでしたし、正直、1学期だけ一緒だったクラスメイトの顔など、全く思い出せなかったのですが、目が覚めた後、何故か当時の記憶が一気に蘇って来たのです。

寝汗でビッショリになって飛び起きた私は、急にものすごく嫌な予感がして、すぐにケンジに電話しました。

すると、ケンジの声が聞こえないほどの雑音の向こうから、かすかに、でも、確かにミヤちゃんの声が聞こえて来ました。

「・・・ワタシ・・・ニ・・・チョウ・・・ダイ・・・」

私は電話の向こうのケンジに向かって叫びました。

「ダメ!! ケンジ!! 逃げて!!」

叫んだ瞬間、電話は切れて、何度かけても繋がらなくなりました。

「ケンジにはきっと聞こえたはず。 早く帰って来て・・・」

いても立ってもいられず、ドキドキしながら駐輪場でケンジたちの帰りを待っていると、ようやく3人のバイクが帰って来ました。

その後、アパートでケンジたちから、今日の出来事の一部始終を聞いた私は、怖い経験をしたことも忘れ、私のヘルメットを他の人に貸し、しかもその場に置いて来てしまったことを、泣きながら徹底的に叱りつけました。

その後は新しい、しかも前のよりずっと可愛いヘルメットを買ってもらい、ついでにお詫びの指輪もゲットしました。

それからしばらくして分かったことですが、あの日はミヤちゃんの、7回目の命日だったそうです。

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白いヘルメット②

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この怪談を書いた人

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