それでもせっかくの3連休をみすみす逃したくなかったので、宿の予約もないまま、思い切って現地まで行ってみることにしました。
「いくら連休中でも、民宿1部屋くらいは空いているだろう。」
そうたかをくくって現地入りしたものの、宿という宿は本当にどこも満室で、そのうち辺りはすっかり暗くなってしまいました。
行きたい温泉の場所は概ね見当が付いていたので、その方向に向かって、ひとりトボトボと山あいの坂を登ると、真っ暗な山の中腹に、ぼんやりと明かりが浮かんで見えました。
「旅館か? いや、小さそうだから民宿か? それともただの民家だったら野宿だな。とりあえずダメ元で行ってみよう。」
ようやくたどり着いたのは、小さいながらも立派な外観の旅館でした。
「うわぁ、こりゃちょっと高そうだな・・・まぁ、野宿よりマシか。」
贅沢は言ってられないという言葉はありますが、その時の私は、贅沢しか言ってられないという、何ともおかしな状況でした。
荘厳な造りの玄関を入り、豪華絢爛な装飾品が置かれたロービーを抜けて、カウンター越しに受付の美しい女性に声をかけると、幸い一部屋だけ空きがあるということでした。
恐る恐る受付の女性に宿代を聞いて、こっそり財布の中を確認すると、ギリギリ一泊分は入っていてので、かなり予算オーバーでしたが、この立派な旅館に泊まることにしました。
中居さんに荷物を持ってもらい、案内された部屋は、今まで泊まった旅館の中でも最高ランクで、大きな窓から麓の街の明かりがとても綺麗に見えました。