東京都 吉田仁美さん(20代・会社員)の恐怖体験談
今から2年ほど前のことです。
高校の同窓会で、久しぶりに旧友たちと会いました。話が尽きず、気づけば終電ギリギリ。駅に着いた頃には、もう深夜近くになっていました。
家までは駅から徒歩20分。いつもならタクシーを拾って帰るのですが、その日に限って、客待ちの車が一台も見当たりません。
仕方なく、歩いて帰ることにしました。大通り沿いなら車通りもあるし、コンビニの灯りもある。真っ暗で物騒な道ではありません。ちょうどいい酔い覚ましだと、そのときは軽く考えていました。
家までの道のりを半分ほど歩いた頃です。
横断歩道の信号待ちで、ふと道の向こう側に目をやると、小学校低学年くらいの女の子が一人で立っていました。
歩道の植え込みに手を突っ込んでは、しゃがんで覗き込み、また別の茂みをかき分ける。何かを、必死に探しているようでした。
――こんな時間に?
時刻はもう深夜11時を回っています。あたりを見回しても、それらしい大人の姿はどこにもありません。
小さな女の子が、こんな時間に一人で何かを探している。その状況自体が、どう考えてもおかしいのです。
信号が変わると同時に、私は急いで横断歩道を渡りました。放っておけない。そう思って、女の子の背中に声をかけました。
「どうしたの? 何か探してるの?」
女の子はこちらを見ません。振り返ることもなく、背を向けたまま、植え込みの中に手を突っ込み続けています。
「こんな時間に、一人なの? お父さんか、お母さんは? お家の人、心配してない?」
そこでようやく、女の子の手が止まりました。
背を向けたまま、小さな、悲しそうな声が聞こえてきました。
「無いの……無くなっちゃったの。このままだとお母さんに叱られるから、おウチに帰れない……」
あまりに切ない声でした。かわいそうになって、私は思わず言ってしまいました。
「そう、じゃあ、お姉ちゃん、一緒に探してあげようか?」
その瞬間、女の子がくるりとこちらを振り向きました。
「お姉ちゃん……わたしのここ……知らない?」
そう言いながら、女の子は着ていたTシャツの裾を、両手でおもむろにめくり上げました。
現れたのは、ザクロのように真っ赤に裂けた、空っぽのお腹でした。
そこから先、自分がどこをどう歩いて家まで帰ったのか、まったく覚えていません。
家族にこの話をしても、酔っ払いの戯言だと、まともに取り合ってもらえませんでした。それからしばらく、私はその道を避けて通るようになりました。
一ヶ月ほど経ったある日、ふとあの夜のことを思い出しました。少し怖かったのですが、思い切ってあの場所へ足を運んでみると――
そこには、たくさんの花束と、ジュースやお菓子が供えられていました。


