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公園の女の子2

公園の女の子2

千葉県 坂上修司さん(10代・大学生)の恐怖体験談

昼休みのたびに、あの子は現れました。

何が好きかと聞いてきて、僕がそっけなく答えるたびに――

何かを壊していくんです。

大学が夏休みに入ってすぐ、僕は警備のアルバイトを始めました。

2日ほどの簡単な研修を受けて、その翌日から早速、県内のアパート建設現場に立つことになりました。

警備といっても、建設中のアパートの前に立って、通行人に口先だけの注意を促す、簡単な仕事です。

朝8時から、1時間の休憩を挟んで夕方5時まで。

直行直帰で交通費も出て、日当1万2千円。 人とのコミュニケーションがあまり得意じゃない僕にとっては、ありがたいバイトでした。

初日の昼休み、近くのコンビニで弁当と飲み物を買って、現場の斜め向かいにある公園で食べることにしました。

真ん中に大きな木が1本立っているだけの、遊具もない公園です。

手洗いと水飲み用の水道と、ベンチが一つ。

寂しい公園でした。

ベンチに座って弁当を食べていると、反対側の花壇の縁に、小学2、3年生くらいの女の子が、一人で座っているのが見えました。

おかっぱ頭に、白い襟付きの長袖シャツ。 赤い肩ベルト付きのスカート。

アニメに出てきそうな、そんな服装が印象的でした。

「あれ? 平日のこんな時間に、学校は休みなのか?」

小学校の夏休みには、まだ少し早いはずです。

ぼんやりそんなことを考えていると、その子と一瞬、目が合いました。

人と話すのが苦手な僕は、子供はもっと苦手で。 すぐに目をそらしましたが、視界の端で、その子がなんとなく、こっちを見ているような気がしていました。

気づかないふりをしながら弁当を食べ終えて、残り30分の昼休みをスマホでもいじって過ごそうかと思っていた、そのとき。

真後ろから、声がしました。

「ねぇ、お花好き?」

飛び上がりそうになるくらい、驚きました。

いつの間にか、すぐ後ろに立っていたんです。

心臓と食べたものが、口から飛び出しそうになるのを堪えて、平静を装いながら答えました。

「う、うーん。そんなに好きじゃないかな」

これ以上関わってこないだろうと思って、そう言ったんです。

すると、女の子は少し怒ったような声と表情で、

「……ああ、そう!」

持っていた花を、両手でぐちゃぐちゃに握り潰して、投げ捨てました。

そのまま、公園から走り去っていきました。

花壇の花を摘んで、無造作に丸めて捨てるなんて――

いくら子供とはいえ、理解できませんでした。

僕は走り去る後ろ姿を目で追いながら、自分の子供嫌いを、改めて実感していました。

翌日も、同じ現場でした。

昼休み、昨日と同じコンビニで昼食を買って公園へ行くと、あの子が、また花壇のところに座っていました。

「イヤだな。場所変えようかな」

そう思ったものの、他に昼食を取れる場所もなく、職人さんたちがたむろしている現場に戻るのも気が引けて。

仕方なく、昨日と同じベンチに座って、弁当を食べ始めました。

昨日のあの反応から考えて、今日はもうちょっかいを出してこないだろう。

そう、高を括っていたんです。

花壇のほうから極力目をそらして、食べ終えた弁当の蓋を閉め、ペットボトルのキャップに手をかけたとき――

耳元で、声がしました。

「ねぇ、セミ好き?」

驚きを抑えて、ゆっくり振り向きました。

女の子は、指先でジジッ、ジジッと暴れるセミをつまんでいて。

ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら、僕の鼻先にグイッと近づけてきました。

「う、うーん。そんなに好きじゃないかな」

また、怒ったような声と表情で、

「……ああ、そう!!」

そう言うと――

セミの頭を、両手でねじ切りました。

地面に、投げ捨てました。

「うわっ!!」

さすがに驚いてベンチから立ち上がると、女の子は踵を返して、走り去っていきました。

無残に引きちぎられながらも、まだ動いているセミと、走り去る後ろ姿。

その両方を交互に見ながら、僕はただ、呆然と立ち尽くすしかありませんでした。

家に帰ってからも、あの女の子のことばかり考えていました。

なぜ、あんな残酷なことができるのか。

命を粗末にしてはいけないと、叱るべきだったんだろうか。

親は、どんな教育をしているんだろう。

もしかして、何か精神的な問題を抱えているんだろうか。

だから学校にも行かず、あの辺りをうろついているんだろうか。

いくら考えても、あの不愉快さを消化できるような答えは、出てきません。

そんなことより、明日もまた、同じ現場での仕事があります。

いつの間にか僕の頭の中は、どうすればあの子に会わずに昼食を取れるか、そればかりになっていました。

翌日、運命の昼休みがやってきました。

前の晩、現場の近くをネットで調べて、道を一本入った先に、別の公園があることを見つけておいたんです。

いつものコンビニで昼食を買って、迷わずそちらへ向かいました。

公園には、砂場で遊ぶ小さな子供と、それを見守る母親の姿だけ。

他には、誰もいません。

僕はホッとしながらベンチに座り、昼食を取って、スマホをいじりながら時間を潰しました。

「そろそろ時間かな」

立ち上がろうとした、その時です。

耳元で、聞き覚えのある声がしました。

「ねぇ、ネコ好き?」

体がこわばりました。

ゆっくり振り向いた右肩越しに、やっぱり、あの子がいました。

手には、ミャーミャーと弱々しく鳴く、生まれて間もない子猫。

僕の頭に、昨日の光景がよみがえりました。

何の躊躇もなく、生きたままのセミを引きちぎった、あの不気味な笑み。

もしここで「そんなに好きじゃない」と答えたら――

この子は、子猫の首を捻り殺すかもしれない。

かといって「好きだ」と答えても、何をしでかすかわかりません。

あれこれ考えているうちに、急に、馬鹿らしくなってきました。

むしろ、腹立たしくなってきました。

「なんでこんなクソガキのために、こんな嫌な思いをしなきゃいけないんだ」

振り向きざまに、人生で一番とも思えるくらいの大声で、叫びました。

「ふざけんな!! もう俺に……!?」

そこには、誰もいませんでした。

我に返って周りを見渡すと、砂場で遊んでいた母子が、逃げるように公園から出ていくのが見えました。

その後、仕事の場所も変わり、あの公園に行くことはなくなりました。

あの時の記憶がトラウマになって、小学生くらいの女の子は、前にも増して苦手になりました。

小さめの公園にも、もう立ち入らないようにしています。

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