兄の遺品

福岡県 会社員 遠藤慶次(33)(仮名) 私には7歳年の離れた兄がいました。 今から20年前のことです。 私が中学生だった頃、年の離れた兄は、すでに社会人になっていました。 兄はちょっとヤンチャで、自分で働いて買ったバイクや車を乗り回し、仲間内でもリーダー格で、その姿は私にとって、憧れの存在でもありました。 そんな兄がある日突然、自ら命を絶ってしまったのです。 母の話では、友人と遊びに行き、帰ってきてから急に人が変わってしまったそうで、それから2ヶ月もしないうちに、自分の部屋で首を吊った兄は、帰らぬ人となりました。 当時の私は、兄の死を上手く受け入れるこ […]

乗車拒否

千葉県 タクシー運転手 藤木幸仁(55)(仮名) 「運転手さん。何か怖い話とか、ないですか?」 時々、お客さんにこんなことを聞かれると、長距離のお客さんの時だけ、私がまだ若かった頃の、こんな体験談をお話しするんです。 私が勤務しているタクシー会社では、ある程度売り上げが多いドライバーだけの特典として、出勤時間などを個人の裁量に任せてくれるシステムがありました。 自分で言うのもアレなんですが、その頃、社内のトップドライバーとして、何度も表彰されたことがあった私は、相番(あいばん:同じ車をシェアする同僚のこと)もナシで、いつでも自由に出勤OKで、そのことは私 […]

ブツブツ・・・・

某県 監察医 藤原順子(36)(仮名) 監察医の仕事は、各自治体の知事によって任命され、行政解剖を行うことです。 「行政解剖」と言うのは、死因がはっきりしないものの、犯罪性のないご遺体の死因を解明する事を目的に行われます。 皆さんがよく耳にする「司法解剖」と言うのは、犯罪の可能性がある場合にのみ、死因を解明するために行う解剖ですので、「行政解剖」とは少し違います。 ちなみに前者は「監察医」が、後者は裁判所の委託を受けた「大学の法医学教室」が担当します。 監察医の主な仕事は、病院以外、例えばご自宅で亡くなった場合など、警察からの報告を受け、検視官による検視 […]

人形からのメッセージ 【後編】

【人形からのメッセージ 前編】からの続編です。 東京都 会社員 西槇由実(26)(仮名) あの体験から何日か経った頃、久しぶりに母から電話がありました。 他愛もない話に花を咲かせ、そろそろ電話を切ろうかと思った時、ふと気になっていた質問をしてみることにしました。 「ところでお母さん、どうしてあの人形、送ってくれたの?」 すると母は驚いた様子でこう言いました。 「どうしてって、あなたから急に夜中に電話がかかってきて、『どうしてもあの人形を送って欲しい』って言われたからじゃない。 あんな真夜中に電話してきて、しかも暗〜い声で急に変なこと言うもんだから・・・お […]

人形からのメッセージ 【前編】

東京都 会社員 西槇由実(26)(仮名) 就職を機に上京し、一人暮らしのマンションでの初めての冬が、まもなく終わりを告げようとしていた頃の体験です。 その頃の私は、厳しい社会の洗礼のおかげで、学生気分はとっくに消え失せ、初めて迎える年度末の決算を目前に控え、連日の残業でヘトヘトの毎日を送っていました。 その日、いつものように終電近くの電車で帰ってきた私は、コンビニで買った夕飯をテーブルの上に置いたまま、化粧も落とさずベッドに仰向けで倒れ込みました。 「ちょっとだけ・・・ちょっとだけ休んだら、お風呂に入ろう・・・」 そう思ったのが早いか、私はそのまま、眠り […]

怖い話

東京都 接客業 小久保綾子(26)(仮名) 私が以前働いていたお店での体験談です。 前のお店を辞め、このお店に入ってから3ヶ月ほど経ち、少しずつ指名ももらえるようになってきた頃でした。 常連さんの中には、時々変わったお客さんがいて、 「ねぇアイちゃん。なんか怖い話、聞かせてくれない?」 というリクエストが上がることがあります。 「アイ」は私のお店での源氏名です。 中にはお客さんと会話をすることを嫌う娘もいますが、私はどちらかと言うと、お客さんとの会話を楽しめる方だったし、時間が延長になる可能性も高くなるので、そんなリクエストがあった時には、いくつかある持 […]

カッちゃん

埼玉県 大学生 木下翔悟(20)(仮名) 小学校1年生から2年生まで、私には大好きな友達がいました。 名前は確か「カツヤ君」で、私は彼を「カッちゃん」と呼び、学校ではもちろん、放課後も近所の公園で待ち合わせをして、暗くなるまで泥んこになって遊ぶ毎日でした。 ところが、3年生になる前の春休み、私の父の転勤で引っ越すことになり、カッちゃんとはそれ以来、一度も合うことはありませんでした。 それから5年の歳月が流れ、中学2年生の冬休みになった時の事です。 夢の中に突然、カッちゃんが出てきました。 今でもハッキリと覚えているほど、とてもリアルな夢でした。 久しぶり […]

手話の叫び

千葉県 主婦 山本優香(仮名) 私の娘には、人と少し違う能力があります。 いわゆる「見える」子です。 その事に気づいたのは、娘が幼稚園に通い初めて、まもなくのことでした。 幼稚園では毎日、その日の出来事や必要な伝達事項の確認に、保護者と先生とで連絡帳のやり取りがあります。 ある日の連絡帳に、娘が時々、壁や教室の隅など、誰もいない方に向かって、空想の「お友達」と遊び始めると、お歌の時間や絵本の時間になってもなかなかやめてくれず、少し困ることがある、といった書き込みがありました。 「ああ、きっとこの子も、見えてるんだな・・・」 実は、幼少期の私にも同じような […]

同窓会の後に

東京都 会社員 石田遼(29)(仮名) 母からの電話で、私が住んでいた村でも少子化が進み、通っていた小学校が廃校になることが決まった、という知らせを聞いたのは、その年の春でした。 戦前から改修を重ね、戦火を逃れ、続いてきた歴史ある小学校です。ましてや母校の廃校となれば、時代の流れとはいえ、何とも切ないものでした。 その年の夏のことです。 私同様「母校廃校」のニュースを聞きつけた同級生たちから、校舎が無くなる前に地元で同窓会をしようという企画が持ち上がりました。 私が在籍していた当時は、1学年全体で13名しかいなかったので、同窓会と言っても、ちょっとした飲 […]

あおり運転

東京都 会社員 杉山耕一郎(28)(仮名) 大学1年の夏休みの体験談です。 男友達4人で、伊豆にドライブ旅行に行くことになりました。 皆若かったので、夜、海水浴場の駐車場で仮眠を取り、翌日1日海で遊んで帰ってくる予定でした。 私は父の車を借りて、バイト終わりの友人3人をピックアップするため、待ち合わせの場所へ向かいました。 そこにもう彼らが待っていることは、かなり遠くから分かりました。 どう考えても仮眠プラス1日海水浴するだけでは使うはずのない、大きく派手なキャリーバッグを持つ者。 どこで借りてきたのか、やったこともないサーフボードを抱えて立つ者。 極め […]