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闇バイト②

闇バイト②

埼玉県 アルバイト Fさん(30代・男性)の今もなお引きずる恐怖体験談

「急募 高収入、裏バイト、闇バイト、即金、即日、日払いのバイト、未経験者歓迎、リスク対策徹底。1日5万~今年最高500万」
「本気で人生を変えたい方、困っている方からのDMお持ちしています」

高校を中退して、アルバイトなどして生計を立てていましたが、どの仕事も長続きせず、結局遊ぶ金欲しさからたどり着いたのは、いわゆる闇バイトでした。

仕事を取り仕切っていたのはYという男で、初めは一般的なSNSのDMで連絡を取り合っていましたが、途中からテレグラムというアプリをインストールするように言われ、その指示に従うと、なぜだか急にフレンドリーな言葉遣いになり、俺の経歴やら家族構成やら、関係のないことまで根掘り葉掘り聞かれました。

今思えば俺の情報をできるだけ聞き出すことで、個人情報や家族構成などを把握して、逃げられない状態を作っていたのでしょう。

Y曰く

「うちのしている「タタキ」は、ブラックなお金(違法な手段で稼いだお金)を持っている人たちだけがターゲットなの。だから警察にも被害届を出せないわけ。だから、捕まることもないっていうことよ」

今考えれば本当にバカだったと思いますが、そのときはYのその言葉を信じてしまったのです。

「タタキ」とは「叩く」、つまり強盗のことです。

「タタキで炊飯器持ってきて」と言われたら、「強盗に入って金目のものを奪ってこい」という隠語です。

いつもYとは「シークレットチャット」と言う機能を使って連絡をとっていたのですが、その日は初めて「チャンネル」という機能を使って、Yとは違う偽名でのやり取りになりました。
そこから急に、まるで別人のようにやけに丁寧な言い回しになったので、違和感があったのですが、そもそもYだって偽名だし、指示役が途中で入れ替わることもあるし、金さえもらえれば目的は達成するので、そのままやり取りを続けました。

いよいよ「タタキ」の犯行当日が来てしまいました。

初対面のNと名乗る、俺より少し年上に見える男と落ち合い、早速指示された住宅へと向かいました。

到着した瞬間、指示された住宅の前で、俺とNはしばらく呆然と佇んでいました。

「・・・本当にこの家か?・・・」

その家は、まるで廃墟のようなあばら家だったのです。

本来ならYに確認すべきところですが、後に現場に行った事が位置情報でバレないように、携帯の電源を入れることは御法度です。

それでも古びた表札には間違いなく、ターゲットの「ヨネダ」という文字が見て取れます。

「仕方ない。とりあえず入って仕事するか・・・」

Nの独り言ともつかない言葉に、その場は俺も従うしかありませんでした。

Nを先頭に、錆びついて大きな音で軋む門扉をこじ開け、玄関の前に立ち、慣れた様子で用意したピッキングの道具を広げるN。
俺がそれを避けて玄関のノブを回すと、何の抵抗感もなくあっさりとドアが開きました。

バツが悪そうにピッキングの道具を片付けるNを残し、俺はそっと玄関からまっすぐに伸びる真っ暗な廊下の奥に向かって、ゆっくりと歩いて行きました。

そもそもYからの司令は”タタキ”だったので、万が一住人が飛び出して来たとしても、文字通り叩いて金を奪うしかありません。

覚悟を決めて、どこから誰が飛び出して来ても、返り討ちにする心構えはできていました。

1歩、2歩、3歩と廊下を進んで行った時のこと、突然ものすごい刺激臭が鼻を突きました。

それはもう、今まで嗅いだことのない、例えるなら乳製品と卵を腐らせ、ドブに投げ捨て、それに生ゴミを混ぜてさらに腐らせたような、強烈な刺激臭です。

それはもう「絶望の臭い」でした。

腹の底から込み上げてくるものを、口を押さえた手と頬の圧力で、何とか胃の中へ押し返し、さらに歩みを進めると、臭いの発生源と思わしき部屋の前に辿り着きました。

自分の中のバロメーターは、もうとっくに「指示に従え」から「早く逃げろ」に切り替わっています。

それでも、これさえ終われば金がもらえると自分自身に言い聞かせ、その部屋のドアをゆっくりと開けてみました。

薄暗いライトに照らされた楕円の動きに合わせ、虫かネズミか、とにかくものすごい数の生物が、一斉に四方八方へ逃げていくのを感じました。

そのライトが照らした部屋の中央には、季節外れのこたつに突っ伏した、人間の成れの果てでした。
溶け出した頭皮は髪の毛ごとずり落ち、コタツの上にへばり付き、その周囲には無数の虫たちが蠢いています。

泥人形に服を着せたようなその物体は、おそらく年配の男性の腐乱死体であろうと想像できました。

「うわーーーっ!! け、警察!ケイサツーーーっ!!」

もう”タタキ”どころではありません。だって、叩く相手が腐って溶けてるんですから!!

俺が思わず叫んだ時には、Nはさっさと逃げて、いなくなっていました。

震える手を必死で抑えながら、かろうじて警察に電話して、その時は当初の目的を完全に見失っていました。

その後我に返った俺は、すぐにその場から逃げたのですが、逃げる途中で職質に会い、あっさり逮捕です。

事情聴取で色々聞かれ、それがきっかけでNも、指示役のYも、程なくして逮捕されたそうです。

俺はその後、不法侵入で起訴されそうになりましたが、何を盗ったわけでもないので、結局不起訴になりました。

その後は自分の生活を本当に心から反省して、普通のアルバイトを始めて、いつか正社員になる事を目標に、今は時給1,200円のバイトを続けています。

時々、仕事が嫌になることもあるのですが、そんな時は決まってあのときの臭いがふっと漂うんです。
そうすると今の仕事のありがたさを感じて、もう悪いことをしようとは思わないんです。

俺、時々思うんです。もしかしたらあの時、チャンネル機能を使って俺たちに「タタキ」の指示を出していたのは、あの家で亡くなっていたヨネダさんなんじゃないかと。
事実、他の犯行は認めても、ヨネダさんの「タタキ」に関しては、指示役のYが頑として認めないらしいのです。

きっとヨネダさんは、もうそんな犯罪に二度と加担しないように、俺を選んでくれたとしか思えないんです。

今ではヨネダさんに、心から感謝しています。

でも、今でも時々漂ってくるあの臭いは、丸1日食欲がブッ飛ぶほどキツイんですけどね。

闇バイト②

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この怪談を書いた人

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