ファミレスで夕飯を食べながらも、あの子のことが頭から離れませんでした。
「あれ、ネグレクトじゃないかな…。児童相談所に通報した方が…」
友人は「他人の家に首を突っ込まない方がいいよ」と諭しましたが、私は講義で習うのとは違う、現実の難しさを痛感しました。
土日を挟んで翌週の月曜日。
久しぶりの晴天で風も心地よい朝でした。公園の前に来て、ふと女の子のことを思い出しました。
駅側からブランコを覗きましたが、誰もいません。反対側まで歩くと――今度は女の子が座っていました。
「さっきはいなかったのに…」
帰り道、再び暗い公園の奥を見ると、やはり女の子がブランコに座っています。
私は近づこうとしましたが、友人が無言で首を振り、私を止めてきました。
公園を避けて駅側の出入り口まで来て、振り払うようにして奥を覗きました。
「あれ? いない…」
わずか1分足らずの間に、姿を消したのでしょうか。
私は確かめるため、反対側の出入り口まで走って戻り、ブランコを見ました。
――女の子は、そこに座っていました。
私は背筋が凍りつき、友人に電話をかけました。
「もしもし、美佳? 何やってんの?」
「ブランコの方、見て! 女の子がいるかどうか!」
「…いないね」
その時、私は確信しました。
駅側からは見えず、反対側からしか見えないのです。
怖いのに、私は公園の中へ足を踏み入れ、女の子の方へ歩いていました。
友人が慌てて追いかけてきて腕を引っ張ったその時、
「ちがうよ。朝からじゃないよ。
お母さんがいなくなってから、ずーっとだよ。」
低くこもった、子供とは思えない声。
初めて顔を上げた女の子は、頰がこけ、両目が真っ黒にくぼんでいました。
私と友人は転がるようにして、その場から逃げ出しました。
友人には、女の子の姿も声も一切見えていなかったそうです。
それ以来、私はその公園を避け、遠回りするようになりました。
3ヶ月後、久しぶりに元の道を通った時、あの古いアパートは取り壊し工事中になっていました。
友人の話では、1年半ほど前、そのアパートに母親と2人で住む小学生の女の子がいました。
母親がある日突然いなくなり、女の子は何ヶ月も一人で母親の帰りを待ち続け、部屋の中で餓死したそうです。
私はあの女の子が、餓死したその子だったのだと悟りました。
ただ、無力な自分にできるのは、かわいそうな子の冥福を祈ることだけでした。
