ひとりかくれんぼ

「あいちゃん」を持って2人で浴室へ行き、半分ほど水を張ったバスタブにぬいぐるみを沈めると、儀式が始まりました。

彼女「最初の鬼は『俊』だから。最初の鬼は『俊』だから。最初の鬼は『俊』だから。」

そう言って一旦部屋に戻り、テレビを砂嵐の画面にして、明かりを消し、2人で目を瞑って10秒数えました。

その後、私はテーブルの上に置いてあった包丁を持って、また2人で浴室へ行き、「あいちゃん見ーつけた!」と言いながら、私はその包丁でぬいぐるみを刺しました。

彼女「よし。 次、進めて」

私「次はあいちゃんが鬼!」

そう言ってぬいぐるみを置き、2人ですぐに浴室から逃げました。

私は寝室のクローゼットの中に隠れ、彼女は浴室を出て反対側に逃げたので、おそらくシューズクロークの中に隠れたのだろうと思いました。

私は何かしら不思議な現象が起きるのを期待しながら、息を潜め、ただひたすらじっと待っていました。

ただひたすら・・・じっと・・・静かに・・・声も出さず・・・

・・・待っていましたが・・・ いくら待っても、何も起きません。

ポケットに入れてあった携帯で時間を確認すると、儀式開始から1時間半ほど経っていました。

私はふっと我に返り、何だかちょっとバカらしくなってきたので、この儀式を終わらせようと思い、用意しておいた塩水を口に含んで、浴室へ向かいました。

その途中、私は彼女にちょっとしたイタズラを仕掛けてやろうと思い付きました。

彼女に気付かれないように儀式を終了させてから、そーっとシューズクロークに行って、彼女を驚かせてやろうと思ったのです。

「いきなりクロークのドア開けてちょっと水でもかけたら、美希ちゃんびっくりするだろうな・・・」

そんな事を考えると、口に含んだ海水を吹き出しそうになりましたが、何とか我慢しました。

そっとそっと、音を立てないように脱衣所のドアを開け、右手の浴室の折れ戸をゆっくり開け、携帯のライト野先に浮かび上がったのは、仰向けで上半身をバスタブに沈め、ダランと外に飛び出している彼女の両足でした。

私「み・・・美希ちゃん!!!」

慌てて彼女をバスタブから引きずり出し、頬を叩いてみましたが、反応がありません。

すぐに救急車を呼び、病院に担ぎ込まれた彼女は、幸い、少し水を飲んだだけで、大事には至りませんでしたが、私はその後、「彼女を殺そうとしたのではないか」ということで、警察に事情を聞かれ、散々な目に会いました。

これは後になって彼女に聞いた話ですが、あの時シューズクロークに隠れている間、彼女はいつの間にか眠ってしまい、気付いたら病院のベッドの上だったそうです。

ちなみに、「ひとりかくれんぼ」というのは、「自分自身に呪いをかける呪術」で、ぬいぐるみに爪や髪を入れる行為は、その人の分身を作ると言う意味合いがあるんだそうです。

ところで、私には未だに一つ気になっていることがあります。

儀式を終わらせるために向かった浴室で、口に含んだ水は慌てて吹き出してしまい、「私の勝ち! 私の勝ち! 私の勝ち!」という「儀式を終了させるためのセリフ」を言っていません。

私たちの「ひとりかくれんぼ」は、本当に終わっているのでしょうか?

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