11番テーブル

某県 短大生 伊豆川由紀(19)(仮名)

私が高校生の時、バイトしていたレストランでの、不思議なお話です。

そのレストランには、誰にも座らせない、4人がけの席がありました。

入り口を入って一番右奥の11番テーブルです。

毎週水曜日の夕方3時頃になると、誰もいないはずの11番テーブルのコードレスチャイム(ピンポン)が鳴ります。

するとバイトも社員さんも、みんな当たり前のように、グラスに入れたお水を1杯持って行くのが、このレストランの「しきたり」になっていました。

もし、お水を持っていかないと、初めのうちは10分おきくらいの間隔でチャイムが鳴り、それでも放っておくと段々鳴る間隔が早くなり、30分も経つと「ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!」と連続で鳴るので、できるだけ1回目のチャイムで持って行くようにしているそうです。

その話を聞いたのがバイトの初日だったので、ちょっと気持ち悪かったのですが、それ以外は明るく楽しい雰囲気のバイト先だし、特に何か怖い目にあったり、被害を被ったりするわけでもないので、私はあまり気にしないことにしました。

この不思議な「しきたり」は、今の店長さんでさえ、どんないわくがあるのかも、いつから始まったのかも、知らないそうです。

ただ、店長さんからは

「この話、面白がって友だちに話したり、SNSにアップしたりしちゃ絶対ダメだよ!」

と固く口止めされていました。

以前、この忠告を無視したアルバイトの男の子は事故に会い、大ケガをして、慌ててSNSから記事を削除したそうです。

私は「客商売だし、たぶん口止めのための脅しだろうな」と思いながらも、なんとなく怖くって、この話を誰かにしたことは、今まで一度もありませんでした。
(今回のこのお話は、レストランの場所や名前は伏せてお話しますので、大丈夫だと思います。たぶん・・・)

普段、その11番テーブルには、ほとんどお客さんをお通しすることはないのですが、どうしても混んでいる時は、時間帯によって、仕方なくご案内することもあります。

でも、特に水曜の3時以降にその席に座ったお客さんは、決まって居心地が悪そうで、注文したものを食べ終わると、サッサと帰ってしまいます。

中にはしばらくお待ちいただいた後にも関わらず、11番テーブルにご案内すると「この席は無理だ」と言って、帰ってしまうお客さんもいました。

私は「見えない派」なので、全くわからないのですが、以前アルバイトをしていた女の子は、そういうのが「見える派」だったらしく、その子の話では、バイトが終わった夜9時頃、信号を渡って反対車線側から何気なく店内の11番テーブルを見た時、髪の長いきれいな女性が、置かれたグラスの水をじっと見ながら、寂しそうに座っているのが見えたそうです。

それが11番テーブルの居心地の悪さに関係しているのかどうかは分かりませんが、とにかく「お客さんが居着かない席」であることは、間違いありませんでした。

とある水曜日の5時頃、見るからに面倒くさそうな、ガラの悪い男女4人組が入店してきました。