翌日も仕事がお休みだったので、掃除や洗濯を済ませた後、人形の処分の仕方を考えました。
「分別すれば捨てられるけど・・・さすがにバラバラにして捨てるのは・・・ちょっと無理だなぁ」
一度はかわいがった人形ですし、人形に罪はありません。
「誰か貰ってくれないかな? でもなぁ・・・みんなこの人形のいきさつ、知ってるしなぁ・・・」
そこで達した結論は「やっぱり実家に持って行って、お母さんに処分してもらおう」ということでした。
私は早速、リュックに人形を入れ、友人との待ち合わせの前に、実家に立ち寄りました。
母に直接手渡すのはちょっと申し訳ないので、まずはこっそり自分の部屋に置いて帰ろう。
そう思って実家のドアを開けようとしましたが、鍵がかかっていて、留守のようでした。
何度かチャイムを鳴らしながら、実家の合鍵を私のマンションに置いてきたことを後悔しつつ、母の携帯に電話をしましたが、出てくれません。
「あれぇ、買い物かなぁ? どこ行っちゃったんだろう?」
実家の玄関前でしばらく待っていましたが、友人との待ち合わせの時間が近付いても、両親ともに帰ってくる気配がありません。
私は仕方なく、そのまま待ち合わせ場所へと向かいました。
夜になって、母たちがどこに行っていたのか、メールで確認したのですが、母は「今日はどこにも行っていない。1日中家にいた」と言うので、携帯に電話した履歴が残っているはずだ、と言っても「そんな履歴はない。どこか他の場所にかけたんじゃないのか」と返されます。
このやり取りで、母とちょっと険悪なムードになり、頼み事をする雰囲気では無くなってしまった私は、次の手段を考えることにしました。
そこへ、たまたま付けていたテレビで、ヒト型の紙を川に流すお祭りを観た私は、ちょっと悪い考えにたどり着きました。
「そうだ。川に流しちゃおう」
私のマンションから歩いて10分ほどの場所に、夏場は涼を求める家族連れで賑わう親水公園があります。
そこなら人目につかず、捨てられるはず。
夜10時をまわり、時間的にも良い頃合いと思い、かなりの罪悪感に苛(さいな)まれながら、私は人形を持って川へ向かいました。
階段を降り、川へ近付き、人形を手にした私は、
「ごめんね」
と、心の中でつぶやきながら、そっと人形を川へ流そうとしたその瞬間!