東京都 会社員 杉山耕一郎(28)(仮名)
大学1年の夏休みの体験談です。
男友達4人で、伊豆にドライブ旅行に行くことになりました。
皆若かったので、夜、海水浴場の駐車場で仮眠を取り、翌日1日海で遊んで帰ってくる予定でした。
私は父の車を借りて、バイト終わりの友人3人をピックアップするため、待ち合わせの場所へ向かいました。
そこにもう彼らが待っていることは、かなり遠くから分かりました。
どう考えても仮眠プラス1日海水浴するだけでは使うはずのない、大きく派手なキャリーバッグを持つ者。
どこで借りてきたのか、やったこともないサーフボードを抱えて立つ者。
極め付きは、あの大きなシャチの浮き輪です。
ガソリンスタンドでバイトをしている友人が、そこでエア・コンプレッサーを借りて、すでにパンパンに膨らませた状態のフルサイズのシャチを、大事そうに抱えて立っていたのです。
「なんでもう膨らましてんだよ! 車に入んねぇだろ! 気合い入り過ぎだよ!!」
「お前サーフィンなんかできんのかよ! 聞いたことねぇよ!!」
「何だよこの荷物! 何泊するつもりだよ!!」
車は3列シートのワゴン車だったので、4人でワイワイ言いながら最後部のシートを潰し、4人分の着替えとキャリーバッグ、サーフボード、特大のシャチを詰め込むと、後部座席はまるでガラクタ倉庫のようでした。
走り始めてすぐ、室内のルームミラーが荷物・・・というよりサーフボードとシャチでふさがり、後方の確認が全くできないことに気が付き、少し気になりながら、10分ほど市内を走った後、静岡方面へと向かう高速道路に乗った頃には、夜の10時を回っていました。
車内ではたわいもない話で盛り上がりながら、1時間ほど走った頃だったでしょうか。
意外と車の少ない高速の走行車線を走っていた私は、いつからか、後ろの車にあおられていることに気が付きました。
ものすごい勢いでパッシングしたり、蛇行しながらクラクションを鳴らしたり・・・
自分の運転を振り返っても、そんなことをされるような覚えはありません。
「今流行のあおり運転か・・・本当にいるんだな・・・」
そんな事を考えていると、あおられていることに気付いた後部座席の友人が言いました。
「おい。あおられてるぜ。次のパーキングエリア入って停まったほうが良いんじゃね?」
その友人の話では、以前テレビ番組で、あおり運転の被害にあった時は安全な場所に停車し、鍵を締め、窓を開けずに警察に相談するのが得策だと言うのを観たということでした。
そこにタイミング良く、パーキングエリアの標識が見えたので、入って様子を見ることにしました。
サイドミラーで後方を確認すると、その車はまだ、しつこくあおり続けて来ます。
ウインカーを出し、パーキングエリアの入り口へと車線変更ましたが、その車はパッシングとクラクションを続けながら、ピッタリと付いてきます。
多少身の危険を感じながらも、正直、少し頭にきていたので、空いている駐車場に車を止め、テレビで観た忠告は完全に無視して、この野郎!と思いながら車を降りて、その車の方へ向かいました。
私の怒りに触発されたのか、それとも私を制止しようとしたのかはわかりませんが、友人たちも全員同じタイミングでドアを開け、私と一緒にその車の方へと向かいました。
「こっちは4人だ。喧嘩になっても楽勝だな」
そう思いながら近付いていくと、向こうも血相を変えて、怒鳴り声を上げながら、ズカズカとこちらに向かって走って来たのです!!