とても後悔した話

S県 会社員 上原高志(22)(仮名)

私は今、とても後悔しています。

県内で有名な心霊スポットと呼ばれる場所に、友人のヒロキ(仮名)と車で遊びに行ったのは、去年の夏のことでした。

現地に着いて、森の中の細い山道を歩くと、小さな祠や石碑があり、2人はその雰囲気を楽しんだ後、深夜2時過ぎに自宅へ戻りました。

その翌日から、体調を崩したり、事故に遭ったり、仕事でミスが続いたりと、2人ともに良くない事が立て続けに起きました。

初めは2人で「心霊スポットで呪われたんじゃないか?」などと、冗談を言い合っていましたが、その後も偶然とは思えないほど、不運な出来事が続きました。

さすがに2人とも恐怖を感じ始めていたのですが、どうすれば良いのかも分からず、ただあの場所に行ったことを後悔するだけの日々を送っていました。

そんなある日のこと、2人でたまたま立ち寄った沿道のファミレスで、法衣を着たお坊さんに声をかけられました。

「いったいどこでそんなもの、付けて来たのかね」

呆れたような口調でお坊さんが言うには、得体の知れない真っ黒な怨念が、グルグルと渦を巻いて2人に絡みついていると言うのです。

「実は・・・」

私がお坊さんに、あの時行った心霊スポットの話をすると

「2人でできるだけ早く、ここへ来なさい。 お金は良いから」

そう言って、お寺の住所が入った1枚の名刺を置いて行ってくれました。

次の休日、2人でそのお寺へ行くと、駐車場の横には立派な鳥居があり、その先には、頂上が見えないほどの、長い長い階段が続いていました。

「随分立派なお寺だな・・・」

そう思いながら2人で、ゼイゼイと息を切らせ、まずは日頃の不摂生を後悔しながら、石の階段を登っていきました。

やっとの思いで頂上に着くと、辺りはもう、薄暗くなっていました。

正面の立派な本堂に少し気おくれしながら、2人で右側の「社務所」と書かれた矢印の方へ歩いて行きました。

少し歩くと、視線の先にあの住職が、まるで今日2人が来ることが分かっていたかのように、待ち受けてくれていました。

「お入りなさい」

2人ともろくすっぽ挨拶もしないうちに、住職に促されるまま、立派な本堂の中に案内されました。

お堂の中には、すでに座布団が2つ並べて置いてありました。

住職に促され、2人で正座すると、住職のお経が始まりました。

長いお経でしたが、とても耳に心地よく、終わった頃には自分自身が浄化されたような、とても良い気分になりました。

その後、住職は座ったままくるりとこちらを向き、2人に向かって話し始めました。

「これでもう良いでしょう。 今後は滅多な所に行かぬよう、気を付けなさい」

さらに、住職の言葉は続きます。

「この後、このお堂から出たその瞬間から、絶対に守らなければならないことが2つだけあります」

住職の表情が、少し険しくなりました。

「悪霊の呪いは口から入ろうとします。
だから絶対に口を開いてはなりません。
息が苦しければ、その場で立ち止まって息を整えなさい」

更に住職は

「これを唇にギュッと咥えて歩きなさい」

そう言いながら、何かを書いた半紙を小さく折った紙を、2人に差し出しました。

「それからもう一つ。

悪霊はあなたの後ろから付いて来ます。

もし途中で振り向けば、悪霊は「まだ自分に未練があるのだ」と思い、
もう一度あなたがたに取り憑きます。

だから階段の下の鳥居を抜けるまで、
何があっても絶対に後ろを振り向いてはなりません。

分かりましたね?」

「なんだ。 意外と簡単だな」

そんな私の心の中を見透かしたように、住職さんの表情が一段と険しくなり、

「良いですね! 何があっても、この2つは忘れてはなりませんよ!!」

と、肩がすくむほどの剣幕で念を押されました。

その後、住職にお礼とお詫びを言い、呼吸を整えてから外に出ると、もうすっかり日が落ち、辺りは真っ暗になっていました。