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公衆電話

公衆電話

福岡県 飲食店経営 Eさん(40代・男性)の怖い話

電話ボックスの公衆電話に電話をかけることができるの、知っていますか?

昔はよく刑事ドラマなんかで、身代金を持っていく場所を、誘拐犯が公衆電話にかけた電話で指定して、警察を翻弄するなんていう設定がありましたよね。
もちろん公衆電話の電話番号は原則非公開なのですが、今でも番号さえ分かれば電話をかけることができるんですよ。

この話はずいぶん昔のことなので、もう時効ということでお話しさせていただきますね。

当時、高校生だった私は、ちょっとした伝手(ツテ)から、近所の公衆電話の電話番号を入手したんです。
その公衆電話は、当時私が住んでいた家の2階にある、私の部屋の窓から見える場所にあったんです。

そのころは携帯電話なんてありませんから、私の部屋にあった子機を使って、電話ボックスで待機する友人が電話に出て、ちょっと話したら別の友達に変わったり、通話中に私の部屋まで走って来て、電話がつながっていることを確認したりして、ごちゃごちゃ遊んでたんです。

まぁ、今考えても随分としょうもない遊びで、当然いつまでも飽きずに遊べるわけもないもんですから、これを使って友達にイタズラしようと言うことになったんですね。

その時の友人4人で、考えに考え抜いた筋書きは、

「1の付く日の夜11時11分11秒にかかってきた電話に出ると、あの世と繋がると言われている公衆電話がある」

というものでした。

高校生のプロットとしては合格点でしょうか?

「さて、それで誰を騙そうか」

話し合いの結果、標的になったのは、クラスメイトのO君でした。

翌日はちょうど1が付く日でしたので、作戦決行です。

その時にはもう役割分担はできていて、私ともう一人は私の家から電話をかける役で、残りの2人はO君と電話ボックスで待ち合わせをする役でした。

登校してきたO君に、教室で早速この話をすると、予想外の食いつきで、是非その公衆電話を見てみたいということでした。

まんまと私たちの策略に嵌ったO君の無邪気な笑顔に、待ち合わせ役の2人は笑いを堪えるのに必死です。

それでも、このチャンスを逃すまいと懸命に笑いを堪え、11時にその電話ボックスの前に集合しようという約束を取り付けました。

学校が終わってからそれぞれ一旦帰宅して、4人は私の家に集まりました。

O君が来る予定時刻の少し前に、待ち合わせ役の2人は電話ボックスへと向かい、その様子を電話する役の2人は、私の部屋から見守りました。

律儀なO君は、恐らく一片の疑いもなく、約束の時間の5分前に集合場所へとやって来ました。

間も無く作戦決行の時間です。

あらかじめ秒針まで合わせておいた4人の時計を見ながら、その時を待ちました。

ついに、その時が来ました。

電話をかける役の私はあらかじめダイヤルしておいた番号の、最後の1桁を回すと、受話器の向こうで呼び出し音が鳴るハズでしたが、なぜだか通話中の「ツー、ツー、ツー・・・」という音が流れました。

「あれ? 何でだ? 話し中だぞ?」

慌てて窓から電話ボックスの方を確認すると、O君が誰かと電話で話しています。

もちろん、電話ボックスの方にいる2人は、私がかけた電話に出ていると思っているハズです。

「あいつ、誰と喋ってんだ???」

隣にいた友人がそう言った瞬間、O君が突然、電話ボックスから飛び出し、猛烈な勢いで坂を走って下って行きました。

「おい!O!!どこいくんだよ!!」

異変を感じた私たちも、すぐに自転車に飛び乗り、O君を追いかけました。

懸命に走る待ち合わせ役の2人の静止を他所に、O君は猛スピードで坂道を下っていきます。

「待っててよー!フォー!今行くよー!すぐ行くよー!ヒュー!待っててねー!もうすぐだよー!!ヒャッホー!!」

奇声を上げながら走るO君に、なかなか追いつけません。

坂を下った先には、片道3車線の幹線道路があります。

「O君!どうしたの!待ってよ!!」

自転車の2人がもう少しで追いつこうかという時、O君はガードレールを軽々と飛び越え、そのままの勢いで、車が行き交う幹線道路の中に走っていきました。

「うわーーーーー!!止まれーーーー!!O君!!」

手前側を走る下り方面の3車線は、各車の急ブレーキのおかげで何とかクリアしたものの、中央分離帯を超えた先の上り車線に入った途端、左から来た乗用車にあえなく跳ね飛ばされたO君の身体は、まるで投げ上げたバトンのようにクルクルと回転しながら高々と宙に舞い上がりました。

その場にいた誰もが、O君の最期を覚悟しましたが、幸いなことに、跳ね上がって落ちたのが道路上ではなく、急ブレーキをかけて止まった他の車の屋根の上だったので、幸いにも一命は取り留めました。

その後、2週間ほど集中治療室にいたO君ですが、その後は容体も安定し、事故から3週間ほど経った時に、4人でお見舞いに行くことになりました。

私たちはまずO君に心から謝罪し、あの時いったい何があったのかを聞いてみました。

O君の話では、あの時かかって来た電話の向こうで喋っていたのは「とっても可愛い女の子」で「今から一緒に遊ぼうよ。その坂下って、道路渡ったところで待ってるからさ!」と誘われて、ものすごく嬉しくなり、その娘に会うために走って行ったのだそうです。

「電話で相手の子が可愛いって、どうしてわかるんだよ?」

「いや、どうしてって言われても・・・でも本当にめちゃめちゃ可愛かったんだよ!!」

私の質問に、O君の回答は要領を得ませんでした。

O君が公衆電話で話した女の子って、いったい誰だったのでしょうか?

それは・・・本当に可愛い女の子で・・・この世の者だったのでしょうか?

その後、あの公衆電話に電話を掛けることは、2度とありませんでした。

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