埼玉県 アルバイト 大橋 栄斗(20)(仮名)
「#闇バイト」って検索したこと、ありますか?
他にも「#裏バイト」「#受け出し」「#高収入」などなど、怪しいアルバイトの情報は、ちょっと調べれば星の数ほど存在します。
その多くが日払いで、日当も最低2万円。探せば日当5万円の仕事だってあります。
これは僕が「#闇バイト」で仕事を探した時の体験談です。
そのバイトの「詳細」には、こう書いてありました。
お留守番するだけ!
201X年7月11日13時から7月15日12時まで
日当3万円 × 正味4日間
最終日に取っ払いで、合計12万円GET!!
多少遠方でも交通費全額支給!!
早いもの勝ち!!
連絡先:090-XXXX-XXXX(担当:イヤマ)
それを見つけた僕は、「怪しいな」と思いながらも、お金欲しさにすぐに担当者に連絡を入れました。
「すみません。○○ってサイトで見たんですけど。まだ仕事ありますか?」
すると、担当者のイヤマという男が、軽薄な言葉遣いで言いました。
「あ、大丈夫よー! じゃあ、11日の夜9時に、○○駅の東口の改札出たとこに来てよ。時間厳守ねーっ!」
その時は自分の名前と連絡先だけ伝え、当日になるのを待ちました。
3日後、7月11日を迎え、少し早めに泊まっていた漫喫を出て、待ち合わせの場所へ向かいました。
現地へ向かう電車の中で、イヤマから電話で聞いた、仕事内容のメモを読み返しました。
留守番中は一切外出禁止!
食糧や飲み物は初日にまとめて買っておく事。
冷蔵庫、トイレ、風呂は使用可。
給料は最終日にまとめて直接現金払い。
必ず最後までやりきらないとバイト代ナシ!
何度読み返しても、あまりにも簡単で、中学生にでもできそうな内容です。
「それで日当3万か・・・なんか、やっぱヤバい仕事なのかな・・・」
そんなことをぼんやり考えていると、待ち合わせの駅に到着しました。
「今更バックレらんないし、金もないし・・・根性決めるか!」
東口の改札へ向かうと、いかにも怪しげなチャラい服装の小男が、携帯を見ながら待っていました。
「あの・・・イヤマさんですか?」
「おお! えっと・・・オオハシくん? 待ってたよー!」
軽薄な小男がいやらしい笑みを浮かべて答えました。
その場で仕事内容の確認をして、いざ留守番をする家まで一緒に行くのかと思いきや、イヤマは汚い手書きの地図とキーケース、それと真っ赤なキャリーバッグを押し付けるように渡してきました。
渡されたキーケースから、番号が振ってある鍵が、ジャラっと音を立てて出てきました。
イヤマはその鍵を指差して、
「一番上から1番、一番下が4番ね。留守番中、鍵は全部かけてね。戸締まり用心、火の用心ね」
僕はイヤマの喋り方にイラッとしながらも、今までの心配事が晴れたような思いがして、少し安心しました。
普通の家に4つも鍵が付いているはずがありません。
きっと、その家の中には、何か高価な代物があって、それが盗まれないように、留守番のバイトを雇っているのでしょう。
その後すぐに、イヤマは
「細かいことはそのキャリーバッグの中の紙に書いてあるから、読んどいて。 じゃあ、あとはヨロシク!」
と言い残して、足早にその場を立ち去ってしまいました。
地図を頼りに、恥ずかしいくらい真っ赤なキャリーバッグを引きずって、駅から10分ほど歩いた場所に、その家がありました。
周辺の比較的新しい町並みの中で、その家は生い茂る雑草に囲まれ、まるで物置小屋のような佇まいで、一見して周りから浮いた存在でした。
特に一番違和感を持ったのは、その家の玄関ドアでした。
廃墟のような古びた木造平屋の家には全く不釣り合いな、まるで倉庫のような、灰色の金属製のドアが付いていたのです。
そしてそのドアには、上から下まで、縦一列に4つの鍵穴が付いていました。