「どうしたの? 何か探してるの?」
すると女の子は、チラッとこちらを見ることもなく、私に背を向けたままの姿勢で、懸命に植え込みの中に手を突っ込んで、何かを探し続けていました。
「こんな時間に、一人なの? お父さんか、お母さんは? お家の人、心配してない?」
すると、女の子は初めて探す手を止めて、背を向けたまま小さな悲しそうな声で、こう言いました。
「無いの・・・ 無くなっちゃったの。
このままだとお母さんに叱られるから、おウチに帰れない・・・」
あまりにも切ない声と言い方に、かわいそうになった私は、思わずこう言ってしまいました。
「そう、じゃあ、お姉ちゃん、一緒に探してあげようか?」
すると、女の子は急にこちらを向いて、こう言ったのです。
「お姉ちゃん・・・ わたしのここ・・・ 知らない?」
そう言いながら振り返った少女は、おもむろに着ていたTシャツのお腹の部分を両手でめくり上げ、ザクロのように真っ赤に裂けた、空っぽのお腹を私に見せたのです。
その後、私はどこをどう通って帰って来たのか、未だに思い出せません。
家族にその話をしましたが、酔っ払いの戯言だと、相手にしてもらえませんでした。
そんなことがあってから、しばらくその道は避けて通っていました。
それから1ヶ月ほどたったある日のことです。
何気なくそのことを思い出したので、少し怖かったのですが、思い切ってその場所へ行ってみると、そこにはたくさんの花束やジュース、お菓子が供えられていました。