お祝い(表)

恐る恐る顔を近づけてよく見た瞬間、

「ひゃあ!!!」

私は思わず悲鳴を上げて、その場に座り込んでしまいました。

よく見るとそれは、人の爪と髪の毛をヒモで束ねたものでした。

爪のカーブに合わせるように、束にした茶色い髪の毛を、爪ごとヒモでぐるぐる巻きにして、その上から針を刺してあるようです。

さらに、袋の中から出てきた白い紙には、「呪」と言う文字と、何かの呪文のようなマークが描かれていました。

これは明らかに、私達を呪う儀式として、だれかが置いて行ったものであるというのは明らかでした。

「なにこれ・・・ だれがこんな・・・」

あまりの恐ろしさに、座り込んだまま身動きもできず、震えていた私のところに、悲鳴を聞きつけた彼が飛んできました。

「美優ちゃん! どうした?」

私は震える声で状況を説明しました。

「まったく・・・ 誰だろうね。こんないたずらするのは」

彼は怒ったような口調で言いましたが、私が何よりショックだったのは、昨日のメンバーの中の誰かが、これを作り、置いていったという事実です。

そしてその犯人は、Aさんしか考えられませんでした。

彼女の左手の包帯、短く切った髪、それらは彼女が犯人であることを如実に表していました。

私はなんとなく、昨日のAさんの行動を思い出し、「まだ他にもある」と直感しました。

すると案の定、最初に見つけたソファーの下とは別に、靴箱の一番上の棚、トイレの棚の奥、キッチンの引き出しの中のトレーの下と、合計4つの同じ袋を見つけたのです。

それぞれの袋の中を開けて確認したところ、爪の大きさからして、おそらく人差し指から小指まで、親指以外の4本の指から剥いだものと思われました。

爪には少しずつ肉片と乾いた血液らしきものが残っていたので、これを作った人は恐らく、順番に爪を剥ぐ痛みに耐えながら、1つ1つ怨念を込めて、この呪いの袋を作り上げて行ったのでしょう。

そう考えると、背筋が凍りつくような思いがしました。

その時、女の直感とでも言うのでしょうか。

・・・妊娠・・・結婚発表・・・Aさんの退職・・・今回の一件・・・

そんな事を考えながら、じっと彼を見ていると、やはり様子が変です。

テーブルに並べた呪いのグッズ一式を前に問いただすと、彼はAさんとの浮気をあっさり認めました。

その後、出産前ということもあったので、呪いのグッズ一式を、近所で一番大きな神社に持っていき、供養とお祓いをしてもらいました。

その事があってから、私には強烈なカードが手に入ったので、今では彼とのどんな交渉も有利に進められるようになりました。

半年後、予定より少し早まりましたが、元気な男の子が生まれました。

産後、私は体調を崩してしまい、思うように動けない日が続いているのですが、それでも彼が色々とやってくれるので、とても助かっています。

そう言えば、「祝う」と言う字と「呪う」と言う字は、少し似ていると思いませんか?

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