気がきく彼女

半ばパニックに陥った俺は、パンツ一丁だったことも忘れ、慌ててドアを開けました。

俺の姿を見たユイちゃんは優しく微笑みながら「少し、外で待ってるね。」と言って、背中を向けました。その時、俺は初めて自分のあられもない姿に気がつきました。

慌てて転がりながらズボンを履き、床に落ちていたシワくちゃのTシャツを着て、とにかく落ちているものの70%くらいを押し入れに突っ込んでから、外で待つユイちゃんを部屋に招き入れました。

「ご・・・ごめんね。なんか、散らかってて・・・(ああ、俺のバカ、なんで今日に限ってこんなに散らかってんだ!)」

「私こそ、急に押しかけちゃって、ごめんなさい。」

ユイちゃんはきちんと頭を下げてから玄関に入り、脱いだ靴をちゃんと揃えてから部屋の中に入ると、当たり前のようにキッチンに立ち、長い黒髪を後ろでキュッと縛り、料理を始めました。

「ご飯、まだですよね? お米、ありますか?」

そこからはもう、まるでドラマか漫画の世界にいるような、至福の時間が流れていきました。俺は床から何センチか浮いていたかもしれません。

ユイちゃんに促され、シャワーを浴びている間、彼女はご飯を作りながら、あっという間に部屋の掃除までしてくれていました。

小さなちゃぶ台の上に、所狭しと出された手料理は、本当にどれも美味しくて、その時俺は心の中で「わが人生に一片の悔いなし!!」と叫んでいました。

夕飯を食べ終わり、キッチンで洗い物をするユイちゃんの後ろ姿をぼんやり眺めていた時、ふと時計に目をやると、いつの間にか11時を回っていました。

「この時間じゃもしかして、泊まっていくつもりか・・・?」

ものすごい期待で色んなところが張り裂けそうでしたが、一生の不覚でした。

美味しい手料理で満腹になった俺は、ユイちゃんの後ろ姿を見ながら、いつの間にか眠ってしまいました。

翌朝、ちゃぶ台に顔を乗せたまま目がさめると、ユイちゃんはもう、帰った後でした。

ふと時計を見ると、昼の12時を少し回っていました。

「やっべ!バイトだ!」

俺は慌ててバイトに向かい、帰ってきたのは夜9時を回っていました。

その日はどういう訳かバイト中も体が重く、昨日は半日近く寝たはずでしたが、どことなく体調がすぐれませんでした。

「変な体勢で寝たからか? 逆に寝すぎかな?」

そう思いながらシャワーを浴び、昨日の幸せな時間を思い出しながらニヤニヤとドライヤーで髪を乾かしていた時、またユイちゃんが大きなレジ袋を持って訪ねて来ました。

俺はもう、天にも昇る気持ちでした。

昨日と同様、至福の時を過ごし、満腹のまま、またいつの間にか眠りにつきました。

翌日も目が覚めたのは昼過ぎでした。

午前中に受講マストの講義があったのですが、もう間に合いません。

仕方がないので、連日の手料理の影響で腹も減っていなかった俺は、昼食もとらず、結局大学へも行きませんでした。

半日ゴロゴロしながら暇を持て余していたその日の夜も、ユイちゃんはいつもの時間に、レジ袋を持って部屋に来ました。

次の日も、そのまた次の日も。毎日毎日、怠惰と至福の時間が流れていきました。

ユイちゃんが初めて俺の部屋を訪ねてきた日から、6日目のことです。

その日の昼過ぎ、俺は腹部の激痛とものすごい吐き気で目が覚めました。