怖い夢の話

M県 大学院生 結城美穂(22)(仮名)

当時、中学2年生で卒業準備委員だった私は、3年生の卒業式を翌週に控え、その準備に忙しい日々を送っていました。

お世話になった先輩たちに、少しでも喜んでもらえるよう、朝は早目に登校して、夕方は暗くなるまで頑張っていました。

連日の作業で疲れが溜まっていたのでしょうか、卒業式本番の5日前の日曜の夜、とてもリアルで、恐ろしい夢を見ました。

夢の中の私は、いつものように卒業式の準備のため、少し早起きして朝食のシリアルを手に取ろうとしたのですが、上手く取れません。

「あれ? おかしいな?」

そこで自分の手をみると、左右の腕が、肩から逆に付いていることに気が付きました。

初めは怖くて大騒ぎしていたのですが、その事を必死に母に訴えても 「そのうち元に戻るわよ」 と軽くあしらわれ、取り付く島もありません。

それでも私は、夢の中で 「卒業式の準備に行かなきゃ」 と思い、左右反対の手で不自由に朝食を食べ、顔中に歯磨き粉をつけながら何とか歯を磨き、おぼつかない手で身支度を整え、フラフラと自転車で学校へ向かいました。

学校に到着すると、何故かすでに体育館の中で、卒業式が始まっていました。

よりによって、本番の日に遅刻した私は、申し訳無さで小さく身をかがめながら、皆んなが座っているパイプ椅子の間をすり抜け、自分の席にたどり着きました。

厳粛な雰囲気の中、

「在校生、起立!」

唐突に掛けられた号令に驚いた私は、一瞬遅れて中央の花道の方に向かって、直立しました。

「卒業生、入場!」

ここで、在校生は、中央の花道を通る卒業生に向かって拍手を送るのですが、私は一人、もじもじと戸惑っていました。

私の手は左右逆なので、拍手ができないのです。

「どうしよう・・・これじゃ拍手できない・・・困ったな・・・」

そう思っていると、隣りにいたAさんが、私の手の異変に気付いて言いました。

「美穂! そのまま拍手したら『裏拍手』になっちゃうよ!」

私は少し前、テレビのホラー特集で聞いた話を思い出しました。

『裏拍手』とは『死者の拍手』と言われ、手のひらではなく、手の甲を打ち合わせる拍手で、死者からの手招きと言う意味の、縁起が悪い行為なんだそうです。

それでも何とか手をねじって、普通の拍手をしようと頑張ってみるのですが、やはり上手く行きません。

すると、戸惑う私に向かって、周りにいる在校生全員が突然、輪になって私を取り囲み、

「こうすればいいんだよ! こうすればいいんだよ!」

と、私に向かって『裏拍手』をして見せるのです。

「怖い! みんなやめて!!」

私は恐怖で頭を抱え、目をつむり、その場にしゃがみこみました。