学校の怪談

東京都 保育士 杉田 恵子(24)(仮名)

皆さんの学校にも、いわゆる「学校の怪談」ってありませんでしたか?

「トイレの花子さん」とか「動き出す理科室の人体模型」とか「夜中に鳴り響く音楽室のピアノ」とか・・・

子供の想像力って、本当に無限ですよね。

私の通っていた小学校には、「4年生にだけ見える幽霊」という話がありました。

あくまで「ウワサ」でしたので、それが具体的にどんな幽霊なのかは、話す人によってまちまちで、上級生を含め、本当に見たと言う人は、一人もいませんでした。

私が4年生になった時、新学期の初めは「幽霊はいつ、どんな風に見えるのか」と言う話で盛り上がっていましたが、それもみんなだんだん飽きて来て、2ヶ月も経つと、誰もその話をしなくなりました。

私の小学校は都内の住宅街の中にあり、少し変わった構造でした。

校門を入って左側の坂を上り切ると、重い灰色の鉄製の扉がある玄関が広がっていて、その中に学年別の靴箱がずらっと並んでいます。

靴箱の間には傘立てがあり、そこをさらに奥へ抜けると、中庭状の校庭があって、それを体育館と3階建ての校舎がぐるっと取り囲む造りになっていました。

その日は確か、梅雨入りして間も無い頃だったと思います。

両親共に仕事が遅くなる事が分かっていた私は、学校の中にある「子供ひろば」で時間を潰し、夕方5時を過ぎた頃、帰路に着きました。

学校を出てすぐ、偶然同じマンションに住む5年生のAちゃんと会ったので、一緒に帰る事になりました。

Aちゃんは金管楽器クラブで、いつもこの時間に帰ると言う事で、2人でおしゃべりをしながら歩いていたのですが、家までの道のりを半分位まで帰った頃、急にポツポツと雨が降り出しました。

その時私は、朝、持って来た傘を、学校に置き忘れて来た事に気付きました。

その日の朝、母に「帰りに傘を忘れない様に持って帰りなさいね」と念を押されていたので、忘れればきっと叱られます。

傘を学校まで取りに帰るため、Aちゃんに先に帰って欲しいと促したのですが、Aちゃんは学校までついていってあげると言ってくれたので、2人で一緒に学校に戻りました。

どんよりと真っ黒な雲が広がる中、校門から坂を登って玄関に入ると、電気も消えていてとても薄暗く、いつもの学校とは全く違う、何だかとても怖い雰囲気でした。

私は急に怖くなって、小走りで傘立ての一番奥にある自分の傘を取りに行った瞬間、大きな雷の光と音で、私は思わず悲鳴をあげて、その場にしゃがみ込んでしまいました。

その後、恐る恐る顔を上げた時です。

校庭を囲む校舎の全部の窓から、何百人と言う子供たちが、お互いを押し除ける様にして顔を出し、全員でこっちを見ていたのです!

私はその恐ろしい光景を目の当たりにして、しばらく固まってしまいました。

すると、次の瞬間、子供たちが一斉に窓から顔を引っ込めたかと思うと、

「ドドドドドドッ!!」

と、地響きを立てながら校舎の中の階段を駆け下り、その何百人の子供たちが校庭に走り出て来て、私の方へ向かって押し寄せて来たのです!!

「キャーーーーーーッ!!」

私は持っていた傘も投げ捨て、Aちゃんと一緒に慌てて学校を出て、家まで猛ダッシュで帰りました。

マンションの入り口に着いた時、Aちゃんに聞きました。

「Aちゃん・・・ さっきの見た? あれ、ナニ?」

でも、Aちゃんは何のことだかさっぱり分からないと言った様子で、あの時は、私が突然悲鳴を上げて走り出したので、とりあえず一緒に走って来たと言うのです。

私はそれを聞いた瞬間、「4年生にしか見えない幽霊」のウワサを思い出し、ますます怖くなりました。

その後、母に、学校に傘を忘れて来たことをネチネチと叱られましたが、私はそんなことは上の空で、しばらくはあの恐怖の体験が頭を離れませんでした。

翌日、私は学校で昨日の出来事をクラスメイトに話すと、しばらくの間、ちょっとした人気者になりました。

そしてあれ以来、私は学校に傘を置き忘れることは、一切無くなりました。