その日は少し混み合っていて、しばらく待合席でお待ちいただいた後、その4人組を12番テーブルへご案内しました。
「ご注文がお決まりになりましたら、こちらのベルを押して・・・」
言い終わる前に、
「ドリンクバー4つ」
そのうち2人はもう、ドリンクバーに向かっていました。
私、そういう感じのお客さん、とっても嫌いでした。
それからしばらくして、その仲間と思わしき新たな4人組が来た時、先に来ていたグループがそれに気付き、勝手に自分たちの隣の11番テーブルに誘導してしまいました。
そこへ接客に向かった私に、12番テーブルのお客さんが言いました。
「おねーさーん。この席、さっきっからずーっと水置いてあるだけだし、誰もいないからいいよねぇ」
私は身勝手な行為に少しイラッとしながらも、「まぁ、バレたなら仕方ないな」とも思い、仕方なく「しきたり」のグラスを片付け、厨房に戻りました。
「どうしましょう。あの人達、勝手に11番に座っちゃいましたけど・・・」
厨房に戻った私は、居合わせた社員さんにそう伝えたのですが、私の心配をよそに、その社員さんはニヤッと笑みを浮かべながら言いました。
「いいじゃない。自分たちで選んで座ったんだから」
それから間もなく、威勢が良かったそのお客さんの表情が見る見る暗くなり、持ってきた飲み物も、グラスの半分以上を残したまま、入店からわずか5分ほどで、居心地悪そうにそそくさと帰り支度を始めました。
その際、12番テーブルの仲間を半ば強引に引き連れて会計を済ませると「気持ちわりぃ店だ・・・」などとブツブツ文句を言いながら、そそくさと店を出ていきました。
「あんなガサツそうな人でも、何か感じるのかな?」
私は何だか「勝った」ような気分になりました。
それに味を占めた私達は、それからというもの、「あ、この客、嫌だな」と思った時には、水曜の3時以降限定で、11番テーブルに案内するようになりました。