東京都 会社員 吉田仁美(28)(仮名)
今から2年くらい前の話です。
その日は高校の同窓会があり、久しぶりの旧友との再会で、皆、かなり盛り上がり、帰りの電車は終電ギリギリになってしまいました。
私の家は、最寄りの駅から徒歩20分ほどかかるため、帰りの時間が遅くなると、いつも駅からタクシーを拾って帰っていたのですが、その日はどういうわけか、客待ちのタクシーが1台もいませんでした。
大通り沿いの歩道を選んで歩けば車の通りも多く、途中コンビニなどもあり、決して真っ暗で怖いようなところはありません。
そこで私は酔い覚ましに、家まで歩いて帰ることにしました。
家までの道のりを半分ほど過ぎた頃、横断歩道で信号待ちをしていると、道を渡った反対側に、小学校低学年くらいの女の子が、一人でウロウロとしているのが見えました。
女の子は歩道の植え込みを手でかき分けたり、しゃがんで覗き込んだりして、懸命に何かを探しているようでした。
こんな時間に、おかしいな、と思いました。
時刻はもう、深夜11時を回っています。
あたりを見回しても、保護者のような人影はありません。
こんな時間に、あんなに小さな女の子が、一人で何かを探すなどというシチュエーションはありえないのです。
信号が変わってすぐに、急いで横断歩道を渡り、その女の子の方に歩み寄って、女の子の背中に向かって声をかけました。