昨日の夢と比べて、私には1つだけ、気付いていないことがありました。
それは、私の首がねじれるように回転する時、私の首を、誰かが意図的にねじ切ろうとしているのだということが、直感的に分かった点です。
それはまるで、巨人が私の頭を鷲づかみにして、無理やり首をねじ切ろうとしているような感覚で、夢とは思えないほど、リアルな感覚でした。
「やめて! 怖い! 痛い!! どうしてこんなことするの!」
私の必死の叫びは、受け入れられることもなく、恐怖と痛みで気を失ってしまうまで続きました。
そして、それから毎晩、悪夢の連鎖は続きました。
3日目も4日目も同じ夢が毎晩続き、精神的にも肉体的にも限界を迎えつつあった5日目のことでした。
その日は休日だったため、目が覚めたら連日の悪夢と対決するために、ある実験をしようと心に決めていました。
実験というのは、私が見た夢と同じアングルになる場所を特定するため、自撮りモードでスマホをかざして、どこから見れば夢で見た光景と同じアングルになるのかを探してみる、ということでした。
その高さや角度から、その場所が特定ができれば、何か原因が掴めるかも知れない。
根拠はありませんでしたが、何となくそんな気がしたのです。
疲れ切った心と体、そして痛む首に鞭打って、懸命にスマホをかざし、夢で見た場所を探していると、部屋の中ではなく、部屋の角に位置するウォークイン・クローゼットの奥の、一番上の棚から見ると、同じアングルになるということが分かりました。
「どうしてこんなところから・・・?」
高すぎて手が届かないため、普段はあまり使っていなかったその棚の中に手を入れて、奥の方を探ってみると、コツンと指先に何かが当たる感触がありました。
椅子を持ってきてそれが何か確認すると、ホコリを被った段ボール箱が1つ出てきました。
それは以前、母が送ってくれた缶詰や食品が入っていた箱でした。
「確か、荷物が届いた時に、中身は全部出したから空っぽだと思うけど・・・」
その箱を開けて中を見た瞬間、私は驚いて、思わず箱を放り投げてしまいました。
箱の中には、右手と右足を前に突き出し、首だけ180度後ろを向いた状態の人形が入っていたのです。
その人形は、私がいつも金縛りにあう時に見る、自分自身の姿と全く同じでした。
それは、私が小さい時にとても可愛がっていた人形です。
上京する時、実家に置いてきたのですが、それを母が見つけ、私の初めての一人暮らしの寂しさを紛らわそうと思ったのでしょうか、一緒に荷物に入れて送ってくれたものでした。
次の瞬間、私はハッと我に返り、箱から転がりでた人形を拾って、首と手足を戻してあげました。
その時、私の心の中には、怖いとかゾッとするとか言う気持ちよりも、涙が出るような、申し訳ない気持ちが溢れてきました。
よくよく考えてみれば、自分が大切にしていた人形を、こんなに不自然な姿勢で箱の中に入れっ放しにしておくなんて、自分でもちょっと考えられません。
たぶん、連日の仕事でヘトヘトに疲れていた余裕のない私を見かねて、人形が何かのメッセージを送ってくれたような、そんな気がしました。
今、その人形は箱から出して、化粧台の上に座らせています。
それからはヘンな夢を見ることもなくなり、また自分を見失ってしまわないように気をつけながら、忙しい日々を送っています。
皆さんも、大切にしていた人形を、どこかにしまい込んで、そのまますっかり忘れている、という事はありませんか?