東京都 大学生 青木康夫(20)(仮名)
サークルの友人5人と仮装して繰り出した渋谷での話です。
楽しげにはしゃぐ人混みの向こうに、ひとりポツンと佇む女性がいました。
行き交う人並みの合間に見える、薄汚れた白っぽい、季節感のない半袖のワンピース姿は、かなり異様な雰囲気でした。
顔の前にだらりと垂らした長い黒髪で、その表情を見ることはできませんでしたが、足元は何も履かず、裸足のように見えました。
ただ塗っただけ、被っただけ、着ただけの仮装と比べると、ハンパないクォリティーです。
私は一緒に来ていた友人に
「おい、あの娘見てみろよ。この寒いのに半袖、裸足だぜ! 今どき貞子の仮装か? 気合入ってるよなー」
すると友人達は私の指差す方向を探しましたが、何故か誰一人、彼女の姿を確認することができません。
「どこよ! どこによ!」
「あそこだよ! ほら、あの赤い看板の店の前・・・あれ? どこいった?」
その瞬間、キーンと耳鳴りがしたかと思うと、あたりは急に静寂に包まれ、人々の動きがピタリと止まったように感じました。
その時です。私の耳元で
「それ、ワタシのこと?」
とささやくような声が聞こえました。
一瞬ゾクッと固まりながらも、すぐに振り返ったのですが、そこには誰もいませんでした。
辺りは元の喧騒に包まれた、騒々しい街に戻っていました。
ハッピーハロウィーン!