上下に挟まれた話

俺の部屋の真上に住む女と、真下に住む男は、どうやら恋人関係にあったらしい。

今朝、女と男は別れ話になったようだ。

女はその腹いせに、あらかじめ用意しておいた長さ5メートルほどのロープの一端を首に巻き付け、反対側をベランダの手すりにしっかりと結び付けた。

その後、部屋の一番奥へと戻り、助走を付けてベランダの手すりの向こうへ向かって身を投げたのだ。

放物線を描いて落ちて行った女は、間もなくピンと張ったロープの衝撃で首の骨がバラバラに折れ、人形のようにボンッと跳ねて宙を舞い、マンション側へ跳ね返りながら、男の部屋のベランダの窓ガラスを突き破って、部屋の中へ突っ込んだ。

女があらかじめ、ロープの長さを計算し尽くしていたのかどうかは分からない。

ただ、その時女は、部屋の中央で腰を抜かしている男の方に向かって、ロープで首を吊られながら、正座した姿勢で座っていたらしい。

骨が砕け、通常の何倍にも伸び切った女の首は、ねじ切れそうになりながら、正座した膝の上に抱えるようにして、不自然に男の方に顔を向けてコロンと乗っていたそうだ。

警察の話では、普通は飛び降りた衝撃で首が千切れてもおかしくないのだが、その女は小柄で痩せていたので、ギリギリで首がつながっていたらしい。

こうして俺の部屋は、ある日突然、事故物件と事故物件に、上下に挟まれてしまったのだが、家賃を安くしてくれるわけでもないらしいので、すぐに引っ越した。

引っ越してからも時々、夜中にあの時の

「ドンッ! ドシャーン!!」

と言う音が聞こえたような気がして、目が覚めることがある。

ちなみに、あまりにも凄惨な事件や事故は、テレビや新聞で詳しく報道されないこともあるらしい。

マジ、ふざけんな! と思った。