「ピピピピピッ!! ダメだよ! そんなモノ流しちゃ!!」
巡回中のおまわりさんに見つかってしまいました。
その後、おまわりさんにこっぴどく叱られ、私はまたトボトボと、人形と一緒に家に帰る羽目になりました。
家に帰った後、人形を見ながら
「あんなにおねだりして買ってもらった人形だし、元カレの怨念がこの人形を捨てさせないようにしてるのかなぁ」
そう思うと、何だか少し、怖くなってきました。
それから何日も、その人形を捨てる方法を考えた結果、私はまた、あまりよろしくない方法を思いつきました。
「川がダメなら、山に行こう」
そう思い、次の休日に向かったのは、自転車で30分ほど走ったところにある、ハイキングコースの入り口でした。
小さな山を、ぐるっと1周回るようにして降りてくるこのコースは、頂上まで行けば半日はかかるのですが、人形を捨てられる山の斜面まで行って途中で引き返せば1時間ほどで帰ってこれます。
リュックに人形を入れ、自転車にまたがり、出発して10分ほどの交差点で、私は車にはねられました。
自転車ごとはね飛ばされ、道路に叩きつけられ、遠くなって行く意識の中、リュックから飛び出したあの人形が、こちらを向いて私の目の前に転がっているのが見えました。
気を失う寸前、目の前で向かい合って倒れている私に向かって、ハッキリと人形の口が動き、私に言ったのです
「ハァ・・ナァ・・レェ・・ナァ・・イィィィ・・・」
次に気がついたのは、静かな病院のベッドの上でした。
ふと右横を見ると、事故の際、バラバラになった私の荷物を、誰かが拾い集めてくれたのでしょう。
母がそれを整理してくれているのが見えました。
「・・・お・・・かぁ・・・さん・・・」
力なく発した声に、母が振り向き、私の意識が戻ったことを、涙を浮かべて喜んでいます。
私はとにかくあの人形のことが気になり、箱の中を見せてくれるよう、母に頼みました。
「事故の時の荷物は、これで全部だって、警察の人が言ってたわよ」
母が見せてくれた箱の中に・・・あの人形はありませんでした!!
「良かった・・・いなくなった・・・」
ホッとした私は、ゆっくりベッドの左に頭を向けると、目の前にあの人形が寝ていました!
あまりの恐怖に、体中が痛いのも忘れ、人形から離れようともがいたのですが、思うように体が動きません。
「おかぁさん!! これ!! この人形!!」
私の必死の訴えに、母が答えました。
「そうよこれ、やよいが病院に担ぎ込まれる時、ものすごい力で抱いてて、先生も看護師さんも、引き離すのが大変だったって言ってたわよ。
あんまり大事そうにしてるから、お母さん、枕元に置いといてあげたのよ」
そう言われ、私はもう諦めました。
「これ以上、この人形を捨てようとすれば、私は殺されてしまうかも知れない」
そう思い、これからはずっと一緒に、この人形と暮らしていこうと思っています。