「やっぱり、他に人がいたんだな・・・」
実はこの廃病院、当時はまだ建物の中にカルテや医療器具が散乱しているような状態で、それなりの雰囲気があったのですが、そのことが噂になり、地元の若者に限らず、県外からの「観光客」にも大人気の、「心霊スポット」ならぬ「観光スポット」になってしまい、週末になると何十人もの人たちが大挙して押し寄せるような状態だったのです。
「ちぇっ! 平日でも人がいるのか・・・つまんないな・・・」
Aに呼ばれ、続いてBが屋上へ向かいました。
しばらくすると、屋上からBの声が聞こえてきました。
「おーい!」
よく見ると、先程より人影がさらに増えています。
6、7人・・・いや、10人ほどいたでしょうか。
続いてCが、建物に入って行きました。
残されたのは私一人です。
「あんなに人がいたんじゃ、ちっとも面白くないな・・・」
そんなことを考えていると
「おーい!」
と、Cの声が聞こえてきました。
屋上を見上げると、さっきよりももっと大勢の人影が、ウロウロと歩いています。
私も入口から入り、落書きだらけの壁を横目に、登り慣れた階段を上って屋上に出ると・・・
そこにはA、B、Cの3人の姿しかありませんでした。
「あれ? 他にもっと・・・たくさん人が・・・いなかったか?」
一旦4人で顔を見合わせた途端、一人が慌てて走り出しました。
残りの3人もすぐさま続けて出口へ向かい、転げ落ちるようにして階段を駆け降り、建物を出て一目散に、もと来た藪道へと走りました。
藪道に差し掛かった時、4人で立ち止まって振り向くと、屋上から何十人もの黒い人影が
「おーい!おーーい!!おーーーい!!!」
と呼びながら、手招きしているのが見えました。
我先にと薮の中を猛ダッシュして、車に飛び乗り、近くのコンビニの駐車場まで逃げ込み、そのまましばらく呆然としながら、4人で朝を迎えました。
その後は4人とも、二度とあそこに近付くことはありませんでしたが、あの廃病院は、今でも存在するらしいです。
ネットで調べればその情報はいくらでも出てきますが、行かない方が良いと思いますよ。