埼玉県 学生 Fさん(10代・男性)の不思議で怖い体験談
それは僕が小学4年生の時の、習い事からの帰り道で体験した不思議な話です。
当時、僕は空手を習っていて、年内の稽古もあと数日で年末年始の休みに入る頃でした。
その日は特別寒くて、駅から帰る道すがら、身悶えしながら歩いて帰ったのを覚えています。
駅から家までの道のりは、途中で僕が通っている小学校の、正門の前を通ります。
ちょうど正門の前を超えた時、高い塀の向こう側から子ども達が何人か、楽しそうにはしゃぐ声が聞こえました。
よく聞いてみると、バシャバシャと水の音がします。
ちょうど塀の向こう側には、小さな池があり、大小20匹ほどの鯉や金魚を飼っていました。
あまりにも楽しそうな声だったので、僕は一旦正門の方まで引き返して、その様子を見ようとしました。
でも、池は固く閉ざされた鉄の門扉から、校舎に伸びるスロープを上がったところにあるため、外からはちょうど死角となって、その様子を窺い知る事ができませんでした。
それでも楽しげにはしゃぐ声と、豪快な水音はずっと聞こえています。
「そうだ!」
塀伝いに坂を少し登ったところに、普段は使われることのない小さな門扉があるのを思い出した僕は、そちらからなら池の様子が見えると思い、小走りでそこへ向かいました。
門扉に顔をくっつけるようにして学校の中を覗くと、隙間から少しだけ池の様子を見る事ができました。
すると、白いタンクトップに黒っぽい短パンを履いた、同学年くらいの坊主頭の男の子が3人で、池の中で足踏みをしながら、鯉を踏み潰そうとしていたのです。
その光景を見て怖くなった僕は、その場でその子たちに注意する事もできず、急いで家に帰ってそのことを母に報告しました。
ところが、それを聞いた母は、冷静な切り返しで言いました。
「こんな冬の寒い日に、タンクトップに短パンで池に入って遊ぶ子なんていないんじゃない?」
母の言葉に、確かにそうだと思い、我に帰りました。
でも、その夜はあの男の子たちのことが頭から離れず、なかなか寝付けませんでした。
翌日、珍しく体育館で全校朝会が開かれ、校長先生から池の鯉と金魚が全て死んでしまったと聞きました。
それを聞いた僕は、やはりあれは見間違いなんかじゃないと確信しました。
その後、主事さんと先生が、前日から池の水を循環させるポンプが故障していたのだけれど、酸欠に強いはずの鯉が、ポンプが1日止まったくらいで全滅するなんて考えられないという話をしているのを聞きました。
結局、誰かが池に毒を入れたのではないかという話まで出て、警察が調べに来る事態にまで発展したのですが、原因は分からず仕舞いでした。
本当の原因を知っているのは、僕だけなんです。