神奈川県に住む、20代の女性会社員Kさんが体験した、偶然とは思えない恐怖体験談です。
それはまだ私が高校生だった頃、当時付き合っていたM君に浮気をされた事が、全ての始まりでした。
その時の私は、男の人とちゃんと付き合ったのは、M君が初めてでした。
だから、彼の浮気を知った時はもう、この世の終わりかと思うほど、どん底まで落ち込みました。
強く深い悲しみは、いつしか恨みの感情に変わり、どうにかして彼に一矢報いたいと思った私は、ネットで「人を呪う方法」を検索しました。
山ほどヒットした「人の呪い方」の中から、これは効きそうだというものを1つ選んで、その方法を実践しました。
詳しいやり方はあえてお話ししませんが、呪いのアイテムとして出来上がったのは、呪いの文言を認めた紙を入れた、真っ赤な封筒でした。
ネット記事に書いてあることに従って、しばらくその「呪いの封筒」を、肌身離さず持っていたのですが、時が経っても、特に彼が病気になるわけでも、怪我をするわけでもありません。
私はずいぶんがっかりしました。
やはり、所詮はネットで調べた、根拠のない方法です。
「効くハズないか・・・」
心の中のモヤモヤは残りましたが、それでも時間が経つにつれ、当初燃え盛っていた恨みの感情が少しずつ薄らいでいくと、何だか次第にバカらしくもなってきて、「呪いの封筒」はいつしかそのまま、机の中に放り込まれ、忘れ去られていきました。
それから10年近く経ったある日のことです。
大学を卒業して、社会人4年目になった私は、ついに実家を出て、一人暮らしをする決心をしました。
引っ越しのために、色々なものを整理しながら片付けていると、机の引き出しの奥から、真っ赤な封筒が出てきました。
それは、あの時作った「呪いの封筒」でした。
「わぁ!そういえばこんなの作ったっけなぁ・・・なつかしい・・・」
思い出に耽りながら、それを処分しようと思ったのですが、モノがモノだけに、ゴミ箱にポイっと捨てるのはなんとなく気が引けたので、キッチンで燃やしました。
その時「M君、もう君を許してあげよう。これで呪いも解けるね」と独りごち、灰になっていく「呪いの封筒」を指先でつつきながら見ていると、停滞していた青春の1ページが漸く捲られた気がして、何だか少し、清々しい気分になりました。
その翌日、引越しの手伝いに来てくれたのは、高校の同級生のSちゃんでした。
初めての一人暮らしは、持っていく物がそれほど多くないため、引っ越し業者さんはものの30分ほどで搬入を完了してくれて、あとは殺風景な新居で、荷解きをするだけです。
一人暮らしで、テレビやインターネットなしでは生きていけないタイプの私が、Sちゃんに引っ越しの手伝いをお願いしたのは、機械の設置が得意だったからでした。
彼女は手際良く、ササッと配線を繋いで、あっという間にネットとテレビを観れる環境が整いました。
「Sちゃん、すごーい!ありがとう!」
最初にテレビ画面に映ったのは、夕方のニュース番組でした。
片付けをしながら、何気なくその音を聞いていると、アナウンサーが私の地元の地名を言ったような気がしました。
「ねぇSちゃん。今『神奈川県のF市で』って言わなかった?」
二人でテレビ画面を見ると、見たことのある住宅街の中で、猛烈な火柱を上げながら燃える1軒のアパートが映し出されていました。
その時、その火事で、唯一焼死した1名の被害者として映し出された画面を見た二人は、声を揃えて「あっ!!」と叫びました。
その火事で亡くなった被害者として映し出されたのは、私が高校生の時に付き合っていた、M君の名前と顔写真だったのです。
(もしかして・・・「呪いの封筒」をキッチンで燃やしたから・・・!?)
私は、許したつもりだった元彼を、呪い殺してしまったのでしょうか。
そのことを考えると、今でも後ろめたい気持ちでいっぱいになるのです。