ウソつきみっちゃん

山梨県 主婦 藤野 伊依(33)(仮名)

私が小学4年生の時、美知子ちゃんという女の子が転校して来ました。

初めのうちは、割と皆んなの中に溶け込んで、私も仲が良かったのですが、しばらくすると、彼女の変わった「癖」のせいで、クラスの皆んなから距離を置かれる様になって来ました。

彼女の「癖」とは、「私には普通の人には見えないものが見えるの」と言うアピールでした。

私の友人は「この世に生まれなかったお兄さんが一緒にいるよ」と言われ、別の友人は「もうすぐお婆ちゃんが病気で死ぬよ」と言われたそうです。

私は「イヨリちゃんの後ろには、耳の無いお坊さんがいて、イヨリちゃんを守ってくれてるよ」と言われました。

彼女はそんな気味の悪い話ばかりするので、次第にみんな嫌気が差して来て、いつの間にか「ウソつきみっちゃん」と呼ばれる様になり、クラスの中でも浮いた存在になってしまいました。

ある日、学校の階段の踊り場で、同じクラスの男子に突き飛ばされたみっちゃんは、階段から落ちて怪我をしてしまいました。

その時もまた、みっちゃんの「もうすぐお母さんと二人ぼっちで暮らす事になるよ」という一言で、その男子が激怒した事が原因でした。

幸い、それほど大きな怪我では無かったのですが、事態を重く見た小学校は、数日後の夕方、緊急の保護者会を開催しました。

実はその少し前、みっちゃんを巡って、クラス内でいじめが横行しているのではないかということで、同級生にアンケートが行われていました。

その際、多くの同級生が、みっちゃんの”ウソ”が原因だと言って、その具体的な例を書いていたのです。

そのアンケート結果を、あろうことか保護者会の時、先生方がプリントにして保護者に配ったらしいのです。

今考えれば「それはちょっとやりすぎなんじゃないか」と思いますが、学校側としては「いじめはもちろん悪いが、いじめられる側にも問題があったのではないか」とアピールすることで、「ケンカ両成敗」を狙っていたのかも知れません。

配られたプリントを見て、保護者の間にはザワザワとどよめきが起こったそうです。

その中で唯一、教室の一番後ろの席で、すすり泣く女性がいました。

みっちゃんのお母さんです。

そして、みっちゃんのお母さんは突然立ち上がって、涙ながらにこう言ったそうです。

「美知子は嘘なんて言ってません! これ全部、どなたか思い当たる節があるんじゃないですか? 正直に話してください!!」

私の母には、思い当たる節があったのです。

それは私がまだ赤ちゃんだった時、近所のお寺に耳の無いお坊さんがいて、私のことをとても可愛がってくれたらしいのです。

「これ・・・ ウチの事だ・・・」

母はすぐにそう思い、ゾッとしたそうです。

そして、教室にいた保護者の全員が、みっちゃんのお母さんの訴えに、何一つ、一言も反論できなかったそうです。

みっちゃんのお母さんは、彼女の特別な能力に、気付いていたんだと思います。

みっちゃんは今、東京で「とてもよく当たる占い師」として、大活躍しているそうです。