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公園の女の子2

「うわっ! このガキ、なんてことするんだ!!」

もちろん口には出しませんでしたが、花壇の花を摘んで、それを無碍(むげ)に丸めて捨てるなんて、いくら子供とは言え考えられません。

僕は走り去る女の子の後ろ姿を目で追いながら、自分の子供嫌いを再認識しました。

翌日もまた、同じ現場の仕事でした。

昼休みになり、昨日と同じコンビニで昼食を買ってあの公園に行くと、昨日の「ちび◯子ちゃん」が花壇のところに座っていました。

「イヤだな。 場所変えようかな」

そう思ったものの、他に昼食が取れるような場所もなく、職人さんたちがタムロしている現場に戻るのも嫌だったので、仕方なく昨日と同じベンチに座って、弁当を食べ始めました。

僕は内心、女の子の昨日の反応から考えると、今日もまたちょっかいを出してくることはないだろうと、高を括っていました。

花壇の方からは極力目をそらし、食べ終えた弁当の蓋を閉め、ペットボトルのキャップに手をかけたとき、耳元で

「ねぇ、セミ好き?」

僕はまた、驚いてぶっ飛びそうな気持ちを抑え、ゆっくりと後ろを振り向くと、女の子は指先で「ジジッ! ジジッ!」と暴れるセミを持ち、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながら、僕の鼻先にグイッと近づけて来ました。

「う、うーん。 そんなに好きじゃないかな?」

するとその女の子は、また怒ったような声と表情で

「・・・ああ、そう!!」

と言いながら、持っていたセミの頭を両手でねじ切り、地面に投げ捨てたのです!!

「うわっ!!」

さすがに僕が驚いてベンチから立ち上がると、女の子は踵(きびす)を返して、そのまま走り去って行きました。

僕は無残に引きちぎられながらもまだ動いているセミと、走り去る女の子の後ろ姿を交互に見ながら、ただ呆然と立ちすくむしかありませんでした。

仕事が終わり、家に着いてから、僕はあの女の子のことを考えていました。

「なぜあんな残酷なことができるのか」
「命を粗末にしてはいけないと叱るべきだったのか」
「親はどんな教育をしているのか」
「もしかしたら、精神的な問題を抱えているのか」
「だから学校へも行かず、あの辺りでウロウロしているのか」

いくら考えても、あの不愉快な出来事を消化できるような答えは出ません。

そんなことより、明日もまた、同じ現場で仕事があります。

僕の思考はいつの間にか、どうやったらあの「悪魔のちび◯子」に会わずに昼食が取れるかにシフトしていました。

翌日、ついに運命の昼休みの時間が来ました。

実は前日の夜、現場の近くの公園付近をネットで検索して、現場から道を1本入った先に、別の公園があることを調べてあったのです。

いつものコンビニで昼食を買った後、僕は迷わずその公園へ向かいました。

公園には砂場で遊ぶ小さな子供と、それを優しく見守る母親の姿があり、他に人はいませんでした。

僕はホッとしながらベンチに座り、昼食を取り、スマホをいじりながら時間を潰しました。

「そろそろ時間かな」

しばらくして、ベンチから立ち上がろうとしたその時です。 耳元で聞き覚えのある声がしました。

「ねぇ、ネコ好き?」

全身に鳥肌が立ちました。

ゆっくり振り向いた右肩越しの視界に入ったのは、やはりあの女の子でした。

女の子の手には、ミャーミャーと弱々しい声で鳴く、生まれて間もないであろう子猫が抱かれていました。

僕はその瞬間、昨日、何の躊躇もなく、生きたままのセミを引きちぎった女の子の、不気味な笑みを思い出しました。

もしここで、昨日のように「そんなに好きじゃない」と答えれば、女の子は子猫の首を捻り殺すかも知れません。

かと言って「好きだ」と答えても、何をしでかすか分かりません。

あれこれ考えを巡らせているうちに、僕は急に馬鹿らしく、むしろ腹立たしくなってきました。

「なぜこんなクソガキのために、嫌な思いをしなきゃいけないんだ?」

僕は振り向きざまに、その子に向かって人生で一番とも思える大声で叫びました。

「ふざけんな!! もう俺に・・・!? あれ?」

そこには誰もいませんでした。

我に返って周りを見渡すと、砂場で遊んでいた母子がいそいそと、僕から逃げるように公園から出ていくのが見えました。

その後、仕事の場所も変わり、あの公園に行くことはなくなりました。

僕はあの時の記憶がトラウマで、小学生くらいの女の子は、前にも増して苦手になりました。

小さめの公園も、立ち入らないようにしています。

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公園の女の子2

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この怪談を書いた人

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