東京都の男子大学生Hさんが、高校の修学旅行の時に体験した、ちょっと笑える心霊体験談です。
この話をすると、聞いた人は皆、大爆笑するので、あまり話したくないのですが・・・。
僕にとっては、人生で一番怖い経験だったんです。
それは、高校2年生の秋のことでした。
ウチの高校では、高2の秋に修学旅行に行くのが慣例で、僕たちもその年、沖縄本島へ行くことになりました。
高2で沖縄ですよ!!
テンションが上がらないハズがありません。
天候にも恵まれ、初日から友人たちと、ヘトヘトになるまで思い切り楽しみました。
宿泊予定の市内のホテルに着いたのは、夜7時を回った頃でした。
入浴と夕食を済ませ、4〜6人のグループごとに部屋に入ったのは、夜9時頃だったと思います。
僕たちのグループは5人1部屋で、初日からはしゃぎ過ぎたこともあってか、僕とA君以外の3人は、消灯時間になった途端、すぐに眠ってしまいました。
僕とA君は興奮覚めやらぬ状態で、部屋の一番奥の壁に寄りかかって、笑い声を殺しながら、他愛もないバカ話に花を咲かせていました。
しばらくすると、部屋の外の廊下を「トスッ・・トスッ・・トスッ・・」と歩く足音が聞こえました。
「やべぇ! 先生の見回りだ!」
そう思った僕とA君は、それぞれの布団の中にサッと潜り込み、寝たフリをしました。
すると案の定、部屋のドアが「カチャッ・・・ギイィィ・・・」と開き、誰かが入ってくる気配がしました。
薄目を開けてドアの方を見てみたのですが、部屋の中は薄暗く、僕はあまり目が良くないので、誰が来たかまでは分かりませんでした。
でも、目を凝らすとそのシルエットで、旅行前に沖縄の文化を調べた時に知った「からじ結い」と言う、伝統的な巻き貝のような髪型に、琉装(りゅうそう)らしい着物を着た女性であることが分かりました。
「あれ・・・ 先生じゃない・・・ 誰だ?」
その琉球女性は、着物が擦れる音を立てながら、僕と反対の一番右側に寝ている友人の枕元に向かって、ゆっくりと近付いて行きました。
その後、僕は信じられないものを見てしまいました。
友人の枕元にたったその琉球女性は、部屋の一番端で寝ている友人の顔を跨いで立ち、着物の裾を両手でまくり上げ、下半身を丸出しにしたその瞬間、友人の顔の上にドスン!と座ったのです!!
顔の上に座られた友人は、息苦しそうに手足をバタバタと動かしていましたが、しばらくして琉球女性が立ち上がると、何事もなかったかのように、そのまま眠っていました。
すると今度は、その隣に寝ている友人の顔の上に立ち、同じように着物の裾を両手でまくり上げ、あらわになったお尻を友人の顔の上にドスン!と下ろしました。
その友人もまた、息苦しそうにバタバタ動いていましたが、しばらくすると、琉球女性は立ち上がって、隣の友人の枕元へ向かいました。
このまま行けば、次はA君の番です。
A君は視力が2.0あるのが自慢でしたので、見えていないハズがありません。
「おいA! 次、来るぞ! どうすんだ!」
僕は心の中で叫びましたが、A君は眠ったふりを続けています。
するとついに、琉球女性はA君の顔の上に仁王立ちになり、着物の裾をまくり上げ、A君の顔の上にドスン!と座りました!
それでもA君は、ほとんど身動きすることもなく、じっとそのまま耐えています。
「Aすげぇ! 根性あるな・・・」
感心していたのもつかの間、次はいよいよ僕の番です。
僕はギュッと目を閉じて、恐怖の儀式に耐える覚悟を一瞬したものの、琉球女性の着物が擦れる音が近付いてくる気配に耐えられず、思わず飛び起きて叫びました。
「来るな!! やめろ!!」
僕がそう叫ぶと、琉球女性の顔が突然、モシャモシャッとモザイクのように崩れて、それが戻るとその顔は女性ではなく、眉が太く、目がギョロッとした男の顔に変化しました。
その瞬間、僕は「こいつはこの世の者じゃない」と確信しました。
その後、僕は気を失ったのか、眠ってしまったのかは分かりませんが、気が付いたら朝食の時間になっていました。
食堂で朝食を食べている時、昨日の出来事はもしかしたら夢だったのかも知れないと思い、A君に確認してみたのですが、A君も同じものを見ていたので、夢ではないことが分かりました。
A君に
「お前、あの時よく我慢できたな」
と話すと、A君は頬を赤らめて言いました。
「だって、チラッと女の顔見たら・・・マジ美人でさ・・・へへへ・・・」
僕はA君のスケベ根性に、ちょっと羨ましささえ感じました。
翌日は別のホテルに泊まったので、あんな経験はあの1度だけでした。
ところで、この話を聞いて笑った人に聞きたいのですが、今晩あの女が枕元に立っても、本当に笑っていられますかね?