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電車ごっこ

電車ごっこ

東京都に住む、20代の女性会社員Aさんが体験した、背筋も凍る恐怖体験談です。

去年の秋、とても変な夢を見ました。

朝、いつものように、家から歩いて最寄り駅へ向かっていた時のことです。

交差点で信号待ちをしていると、歩道の右側から『電車ごっこ』の列が来ました。

ロープの先頭には、いつも利用する鉄道会社の制服を着た運転士さんがいて、一番後ろには車掌さんらしき人がいますが、よく見ると警察官の制服を着ています。

『電車』が近付いて来て、私の目の前で停車すると、警察官の車掌さんが、肩口のマイクを手に取り

「各駅停車、○○霊園行きです。次の停車駅は○○病院前、○○病院前です」

とアナウンスをしました。

ちなみに、「○○霊園」も「○○病院」も、近くに実在する施設の名称です。

すると、私の両脇から、何人かの人がロープをくぐって、その『電車』に乗り込みました。

白いエコバッグを持った女性と、茶色いカバンを両手で大事そうに持っているサラリーマン風の男性。

3歳くらいの三つ編みの女の子と、その手を引く若いお母さん。

イヤホンをしている若い男性はロープを引き上げて、シルバーカーを押すお婆さんの乗車を手伝っています。

6人が『電車』に乗ると、運転士が前方を指差し、

「発車しまーーーーーす!」

と大声で合図を送りました。

すると、警察官の車掌さんが、帽子の奥からチラッと私の方を見て、「乗らないの?」と、目で合図を送ってきましたが、私は目をそらし、1歩あとずさりして、乗りませんでした。

「ピリリリリーーーーーッ!!」

警察官の車掌さんが吹き鳴らしたホイッスルを合図に、6人の乗客を乗せた『電車』が、ゆっくりと動き出しました。

私の目の前を曲がる時、『電車』のロープが私の左腕にズルズルと当たりましたが、私はそれを避けるでもなく突っ立ったまま、『電車』がゆっくりと過ぎ去って行くのを、ボーッと眺めていました。

そんな夢を見た翌日のことです。

夢で見たのと同じ人達が同じ場所で、私の前に立ち、信号待ちをしていることに驚きました。

白いエコバッグを持った女性と、茶色いカバンを両手で大事そうに持っているサラリーマン風の男性。

3歳くらいの三つ編みの女の子と、その手を引く若いお母さん。

イヤホンをしている若い男性と、シルバーカーを押すお婆さん。

「すごーい! デジャブだっけ? 正夢って本当にあるんだな・・・」

そんなことを考えていると、突然、右側から来た車がスリップして、何かにぶつかる音が聞こえました。

次の瞬間、暴走した車が私の立っている場所に向かって突っ込んで来て、間一髪、恐怖ですくんだ私の左腕をかすめて歩道を通り抜け、信号機にぶつかって止まりました。

私より少し前で待っていた6人は、私の目の前でその事故に巻き込まれてしまったのです。

近くで交通整理をしていた警察官が、

「ピリリリリーーーーーッ!!」

っとホイッスルを鳴らしながら、現場に駆けつけてきました。

暴走車に跳ね飛ばされ、私の周りで倒れていた何人かは、かなりの大怪我だったと思います。

もし、私があの夢の中で、あの『電車』に乗り込んでいたら・・・

私もあの事故に巻き込まれていたのかも知れないと思うと、今でも背筋が凍るような思いがします。

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この怪談を書いた人

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