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猫屋敷|格安の中古住宅で始まった異変【実話怪談・怖い話】

猫屋敷

埼玉県 小野昭仁さん(30代・会社員)の恐怖体験談

*この怪談には一部刺激的な表現が使用されています。閲覧の際はご注意ください。

結婚して3年ほど経った頃、私は中古の一軒家を買いました。 「不動産に掘り出し物なし」とはよく聞きますが、この物件は破格でした。 その安さの理由に、私はまだ気づいていませんでした。

いわゆる事故物件なのではと疑い、ネットで調べてみたのですが、そういった情報は出てきません。それどころか、フルリフォーム済みの家は木の香りがして、最新の設備も整い、とても快適でした。

ところが、1ヶ月もすると、何か変な臭いがするようになったんです。

どこを探しても、発生源が分かりません。

ちょうどその頃、近所のおばさん連中が、何やらヒソヒソと話していました。通りがかりに挨拶をすると、明らかによそよそしく、そそくさと帰っていきます。少し気になりましたが、そのくらいの近所付き合いのほうが面倒がなくてちょうどいい、と考え直すことにしました。

ある日、いつものように会社で仕事をしていると、妻からLINEが届きました。

内容を見て、少し驚きました。

あれほど動物嫌いだった彼女が、猫を飼いたいと言うんです。

送られてきたLINEには、生まれたてらしい、愛くるしい茶色の子猫の写真がありました。聞けば、家の軒下でうずくまって鳴いていたとのこと。

私たち夫婦には子供もいませんし、猫1匹くらいなら飼えるだろう。そうたかを括って、彼女の提案に同意しました。

仕事を終えて家に帰ると、妻に抱えられた4匹の子猫が、私を出迎えました。

「1匹じゃなかったの?」

いくら私が呑気な性格とはいえ、さすがにこれには閉口しました。それでも、家の中を清潔に保つこと、里親が見つかるまでの期間限定であることを条件に、4匹とも飼うことを承諾しました。

翌週、妻がまたLINEで、今度は白い猫の兄弟が軒下にいたと言い、それも飼いたいと言い始めました。

先週は2匹、今週は3匹。見る見るうちに数は増えていき、さほど広くもない家の中には、いつしか十数匹の猫がひしめき合って暮らすようになっていました。

猫を飼い始めて知ったのですが、あの子たちは基本的に夜行性らしいんです。

夜な夜な、部屋のあちこちでバタバタとじゃれ合う音が続いて、寝不足の日々が続きました。

その日の夜中も、あっちでバタバタ、こっちでバタバタする音で目が覚めました。

隣で寝ているはずの妻の姿が、ありません。

トイレか、水でも飲みに行ったのだろう。そう思っていましたが、いつまで経っても戻ってくる気配がありませんでした。

「俺も水でも飲んで、仕切り直すか」

そう思ってキッチンに向かうと――

リビングに敷かれたカーペットの上で、四つん這いになり、懸命に爪を研いでいる妻の姿がありました。

我が目を疑いました。

「どうしたの?! 何やってんの?!」

慌ててリビングの電気をつけ、その行為を止めようと、後ろから妻の両脇を抱えました。

カーペットから引き剥がした、その瞬間です。

「喉が渇いた! お腹が減った! 痛い! 熱い! やめて! ここから出して!」

無数の叫び声にも似た、人間の言葉とは違う断末魔の叫喚が、部屋中に響き渡りました。

彼女がそう叫んだのか。

それとも、私の頭の中だけに湧き上がってきた咆哮だったのか。

この状況にあっては、そんなことはどうでもよかったんです。

妻は一瞬、ハッと我に返った様子でした。でも、すぐにその場に崩れ落ちるようにして、意識を失いました。

腕の中で気を失っている彼女の手元を見ると――

指の爪はほとんど剥がれ、白いカーペットは血で真っ赤に染まっていました。

「この家は普通じゃない!」

そう確信した私は、翌日、妻を病院に連れて行ったその足で、家を販売した不動産屋に直接出向き、担当者を問い詰めました。

すると案の定、その物件に住んでいた家主は以前、猫を何十匹も飼っていて、ついには多頭飼育崩壊していたことを白状したんです。

その状況は凄惨でした。家主は猫たちに満足に餌もやらず、猫同士の共食いは日常茶飯事だったそうです。

その上、家主自身も猫たちを陰湿な方法で虐待し、殺し続けていました。それどころか、猫たちを食べていた形跡まであったといいます。

その家主はその後、精神病院に強制入院させられ、親族があの物件を売りに出したのだそうです。

「人が死んでいないのだから事故物件ではない。リフォームもしたのだから告知の義務はない」

不動産屋はそう言い訳しましたが、そんな理屈が通用するはずがありません。

不動産屋に費用を負担させ、床下を掘ってみると――

リフォームの際には発見されなかった、いや、見て見ぬフリをして埋め戻されたのであろう猫の死骸が、ものすごい異臭とともに、何十体も出てきました。

「初めに感じた、あの異臭の原因は、これだったのか」

後日聞いた話では、頭と体の数が合わず、中には踏み潰されたような亡骸もあったそうです。

その後、近所のお寺に頼んで、不幸な猫たちをしっかり供養してもらいました。それまで飼っていた猫は全て、里親を探してくれる専門業者に引き取ってもらいました。

妻はしばらく入院していましたが、今では何事もなかったかのように、この家で暮らしています。

ただ、時々、手の甲で頬を撫でる仕草をするのが、少し気になります。

もしそれを舐めるようになったら……もう一度、お祓いに連れて行こうと思っています。

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