神奈川県 真田香奈恵さん(20代・主婦)の恐怖体験談
※※※閲覧注意※※※ この話は、現在妊娠中の方が読むと障(さわり)があるかもしれません。念のため、閲覧はお控えください。
短大を卒業したその年、私は妊娠をきっかけに、四歳年上の彼と結婚することになりました。
ちょうど新型コロナの影響で、大々的な結婚式を挙げられない時期です。両家の顔合わせと、ウエディングフォトを撮っただけの、ごく質素な儀式。それで「はい、おしまい」でした。
妊娠が安定期に入った頃、短大時代の親友二人が、どこからか私の結婚を聞きつけてお祝いをしようと言ってくれました。
まだ大人数での会食はできない時期です。まずは三人だけで、と私と主人の新居に集まることになりました。
顔を合わせるなり、「なんで結婚したこと黙ってたの」と質問攻め。針のむしろとはこのことです。
しばらく責められながら、私は妊娠のこともいつ打ち明けようかとタイミングを計っていました。
そんな時、友人の一人、麻友がトイレに立ちました。
すると、もう一人の京香が、麻友に聞こえないよう声を落として言ったんです。
「咲希、妊娠したんだって? おめでとう〜 はいコレ、昨日行ってきたんだよ」
差し出されたのは、県内にある「Y水天宮」と書かれた小さな袋。中には「安産祈願」と刺繍の入った、可愛らしいお守りが入っていました。
誰にも言っていないのに、どこで知ったんだろう。
そう思った瞬間、麻友が戻ってきて、結局聞きそびれてしまいました。
そのあとは短大時代の思い出話に花が咲き、私は最後まで妊娠のことを言い出せないまま、久しぶりの女子会はお開きになりました。
それから一週間も経たないうちに、私は突然の体調不良で病院に運ばれ、流産していることが分かりました。
安定期に入ったばかりで、お医者さんにも原因は分からないと言われました。しばらくは、悲しみに沈む日々が続きました。
二年後、私はふたたび妊娠しました。
不思議なことに、どこで聞きつけたのか、また京香から連絡が来て、三人で会うことになったんです。
「前はほら、効かなかったじゃない? だから今度は違うのにしたの」
麻友がいない隙を見計らって、京香は屈託のない顔で、県内I市のH神社のお守りを差し出しました。
その時、ほんの少し、何かが引っかかるような感覚がありました。でも、悪気があるわけがない。そう思い直して、ありがたく受け取りました。
一週間後、私はまた流産しました。
ネットでは、流産は一度続くと癖になるという噂もあり、私はしばらく子供を作ることをためらいました。
それでも二年と経たないうちに、私はまた妊娠しました。
まるで私の妊娠を見計らっていたかのように、京香から連絡が来て、また三人で会うことになる。
麻友がいない隙を狙って京香がお守りを差し出す。もう、いつものルーティンでした。今度は、Y市のH水天宮のお守りです。
正直、この流れを断ち切りたかった。私はその翌日、腹帯を持ってK市のT八幡宮まで足を運び、きちんと祈祷を受けて、あらためて安産のお守りを買い求めました。
「今度こそ、無事に生まれてきますように」
家に帰ってから、主人と二人で手を合わせ、飾り棚に腹帯と新しいお守りを並べて置きました。
その隣には、これまで京香からもらった三つのお守りが置いてあります。
異変が起きたのは、その直後でした。
三つのお守りの四つ角が、すっと動いたんです。
手足のように。
まるで赤ちゃんがハイハイするように、四つ角がそれぞれ蠢きながら、私が置いた腹帯とお守りの方へ、一斉に這い出したのです。
それは、母親に縋ろうとする赤ん坊そのものの動きでした。
私も主人も、声を出すことすらできませんでした。ただ、目の前で起きているそれを、見ているしかなかったんです。
「これは、何かおかしい」
そう思った私は、怖がって止める主人の手を振り切り、京香からもらったお守りの一つを手に取りました。
その瞬間、指先にチクッと痛みが走り、丸い血の玉が滲みました。
恐る恐る、お守りの中身を取り出してみました。
もともと入っていたはずのお札は、真っ二つに引きちぎられていました。
一緒に入っていたのは、髪の毛の束。赤黒く乾いた肉片のついた、おそらく小指の爪と思われるもの。そして、赤い糸を通した針で、何重にも縫い付けられた紙切れでした。
――そういえば京香、会うたびに毎回、左手の小指にテーピングをしていました。
針と糸を抜いて紙を広げてみると、半円の中に「子」という一文字。何度も貫くように、繰り返し縫われた穴が空いていました。
不器用な京香のことです。きっと縫うたびに、自分の指を何度も刺したのでしょう。紙には、小さな血の跡がいくつも滲んでいました。
先にもらった二つのお守りにも、同じものが入っていました。
私は、思わずつぶやいていました。
「私、そこまで恨まれてたんだ……」
短大を卒業してすぐ、今の主人を京香から奪ったのは、私でした。
彼が親友の京香と付き合っていることを知りながら、私は彼と関係を持ち、妊娠したのです。
泣いて謝る私に、京香は「彼だって悪いんだから、もうそんなに気にしなくていいよ」と言ってくれました。私はそれで、すっかり禊は済んだものだと思い込んでいたんです。
その後、京香の連絡先は消し、SNSもすべてブロックしました。
翌年、私は無事に出産し、その後さらに二人の子宝にも恵まれて、今は主人と五人で幸せに暮らしています。
風の噂では、京香は結婚して、今は東京に住んでいるそうです。
もし彼女に子供ができたら、安産祈願のお守りを送ってあげようと思っています。
中身が手作りのね。


