山梨県 藤野伊依さん(30代・主婦)の恐怖体験談
小学4年生のとき、クラスに美知子ちゃんという女の子が転校してきました。 最初のうちは、割とすんなりみんなの中に溶け込んでいて、私も彼女とは仲が良かったんです。休み時間に一緒に折り紙をしたり、隣の席同士で消しゴムを貸し借りしたりする、ごく普通の関係でした。 でも、しばらくすると、彼女のある「癖」のせいで、クラスの中の空気が少しずつ変わっていきました。
その癖というのは、「私には、普通の人には見えないものが見えるの」というアピールでした。
私の友人は、彼女からこう言われたそうです。
「この世に生まれなかったお兄さんが、一緒にいるよ」
別の友人は、こう言われました。
「もうすぐお婆ちゃんが、病気で死ぬよ」
そして私は、彼女からこう言われたことがあります。
「イヨリちゃんの後ろには、耳の無いお坊さんがいて、イヨリちゃんを守ってくれてるよ」
みっちゃんは、こういう話を、ごく普通の世間話のように話すんです。だからこそ、余計に薄気味悪く感じられたのかもしれません。
そんな話ばかりする彼女に、クラスのみんなは次第に嫌気が差していきました。休み時間に彼女の周りから、自然と人が離れていくのが分かりました。いつの間にか「ウソつきみっちゃん」と呼ばれるようになり、彼女はクラスの中で、浮いた存在になってしまったんです。
ある日、学校の階段の踊り場で、事件が起きました。
同じクラスの男子に突き飛ばされたみっちゃんは、階段から落ちて、怪我をしてしまったのです。
原因は、またしても彼女のひとことでした。
「もうすぐ、お母さんと二人ぼっちで暮らすことになるよ」
それを聞いた男子が、激怒したのです。
幸い、それほど大きな怪我ではありませんでした。それでも、事態を重く見た小学校は、数日後の夕方、緊急の保護者会を開くことになりました。
実はこの少し前、みっちゃんを巡ってクラス内でいじめが横行しているのではないか、ということで、同級生を対象にしたアンケートが行われていました。
そのアンケートでは、多くの同級生が、みっちゃんの”ウソ”が原因だと答え、具体的な発言の例まで書いていたのです。
その結果を、あろうことか学校側は、保護者会の場でプリントにして配ったそうです。
今考えれば、さすがにやりすぎだったと思います。おそらく学校としては、「いじめはもちろん悪いが、いじめられる側にも問題があったのではないか」とアピールすることで、いわゆる”ケンカ両成敗”に持ち込もうとしていたのかもしれません。
配られたプリントに目を通した保護者たちの間に、ざわざわとどよめきが起こりました。あちこちで小さな声が交わされ、教室の空気は、みるみる重くなっていきました。
そんな中、教室の一番後ろの席で、ひとり静かにすすり泣いている女性がいました。
みっちゃんのお母さんでした。
彼女は、突然立ち上がりました。
そして、涙ながらに、こう言ったのです。
「美知子は嘘なんて言ってません! これ全部、どなたか思い当たる節があるんじゃないですか? 正直に話してください!!」
――思い当たる節が、あったのです。私の母に。
私がまだ赤ちゃんだった頃、近所のお寺に、耳の無いお坊さんがいました。そのお坊さんは、私のことをとても可愛がってくれていたそうです。
「これ・・・ ウチの事だ・・・」
母は、すぐにそう気づいたそうです。そして、ゾッとしたと言っていました。
教室にいた保護者は、誰ひとりとして、みっちゃんのお母さんの訴えに、一言も言い返すことができませんでした。
みっちゃんのお母さんは、きっと気づいていたんだと思います。娘の、あの特別な力に。
みっちゃんは今、東京で「とてもよく当たる占い師」として、活躍しているそうです。


